ヒオカ「ドラマで〈恋愛しない人〉が〈恋愛体質の親の被害者〉や〈偏屈な人〉と描かれるのはなぜなのか」
貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。第79回は「恋愛しない人の描写について」です。 * * * * * * * ◆結婚が普通という価値観に違和感を抱く主人公 現在放送中のドラマ『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私』は、4姉妹の物語なのだが、主人公で脚本家を目指している次女・町田涼(堀田真由)は恋をしないし、結婚願望もない。 このドラマでは、世の恋愛・結婚をするのが普通という価値観に違和感を抱く涼の心情がよくセリフに出てくる。「なんで結婚しない生き方にこだわってるの?」と聞かれると、涼はこう答える。 「こだわってるっていうか、私にとってはそれが自然だから。そもそも、結婚しないことより、結婚することのほうがずーっと大きな変化なのに、結婚する人には、なんで結婚する生き方にこだわるんですかとか聞かないじゃん。私にはいまのままでいることが自然で恋愛にも結婚にも興味がない。でも、そういうのしないとなぜかいつも理由を尋ねられる。そっちのほうが不思議だよ」 さらに、恋愛要素が求められるテレビ業界にも異を唱える。 「私は恋愛も結婚もしたいと思わないけど、ドラマ作ってるとさ、恋愛が視聴者の最大公約数的な悩みにされること多いじゃん。私はそういう価値観がピンとこなくていつも蚊帳の外に感じてた。そういう人間はドラマ作れないのかな」 涼は、脚本家を目指し、勤めていたテレビ局を辞めるのだが、その後の進路に特にあてがあるわけでもなかった。そして、そんな涼を拾ってくれたのは、ラブストーリーで有名な脚本家・大平かなえ(筒井真理子)だった。脚本家になる足がかりを作らなければならない涼は、恋愛モノを書きたくないと思いつつ、大平のもとで働くことになる。 大平はとある恋愛ドラマを担当することになる。ラブストーリーで有名な大平だが、実は自身は恋愛経験に乏しく、そこからラブストーリーをひねり出すことに限界を感じていた。俺様キャラとの恋愛という企画を出すが、制作側に古い、視聴者に刺さらないと一蹴されてしまう。それを見ていた涼は、本来当て馬キャラの、普通で誠実な男性を本命にする案を出し、その企画が通る。それによりやる気を取り戻した大平は、脚本を書き始める。
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