パリを拠点にする日本人デザイナー、宮白羊の「Hakuyo Miya Paris」を紐解く
パリ20区の静かな通りに佇む小さなアトリエ兼店舗。ここで、日本人デザイナー宮白羊さんが手掛けるブランド「Hakuyo Miya Paris」が、独自の世界観を紡ぎ出している。 パリで17年の歳月を重ねた宮さんは、日本とフランス、2つの文化の良さを巧みに取り入れた洋服で、多くの人々の心を掴んでいる。 大量生産が当たり前の時代に、一着一着に込める思いや、服作りを通じて伝えたいこと。そして、ファッションの力で世界をちょっとだけ良くできるかもしれない――そんな宮さんの夢と挑戦について、話を聞いた。
パーソナライズされたものの方が受け入れられやすい
ーまずは、宮さんがデザイナーを志した経緯について教えてください。 服を着ることが好きで、この道を選びました。大学では商学部に在籍し、ファッションとは直接関係のない分野を専攻していましたが、大学時代アパレル業界でマーチャンダイジングや経営に興味を持ち少しでもその業界に近づけるよう販売員のアルバイトを始めました。 そこで人の洋服を売るよりも自分でデザインしたい。自分で洋服を作ってみたいという気持ちが強くなりました。 大学卒業後、本格的にファッションの道に進みたいと考えました。日本の専門学校への進学も検討しましたが、思い切ってパリ留学を決意しました。幸い、両親も柔軟な視野を持っており、私の決断を支持してくれたんです。 専門学校卒業後、デザイン関連のフリーランスとして働き始めましたが、ビザの問題などもあり、年齢的な不安も感じていました。大学卒業後に専門教育を受けたため、スタートが遅れているのではないかと悩むこともありました。実際には、ブランドを立ち上げるのに遅すぎることはないのですが、当時の私にはそうは思えなかったのです。 そこで、さらなる経験を積むよりも、思い切ってブランドを立ち上げることを決意し、会社として本格的に事業を展開していくことにしました。
ーそこからパリでお店を構えた宮さん。来店された方々とはどのようなコミュニケーションをとっているのでしょうか。 お客様には、まずブランドのコンセプトを丁寧に説明しています。偶然立ち寄られた方からは、「これは販売しているものですか?」といった質問をよくいただきます。その際、「はい、こちらは販売しております。ご要望があればパーソナルオーダーも承ります」とお答えし、既存のシャツの丈を調整したり、別の素材で仕立てたりといった対応が可能なこと、さらには完全なオーダーメイドもお受けしていることをお伝えしています。 すべての商品をこのアトリエで自ら手掛けていることも強調しています。この説明を聞いて、多くの方が興味を持ってくださいます。すぐに注文に至らなくても、数ヶ月後、時には数年後に思い出して再訪してくださる方も少なくありません。 また、地域に密着した店舗であることも大切にしています。たとえば結婚式への参列衣装の相談もあったりするなど、必要なときに気軽に訪れていただける場所として、皆さんに認識していただいています。予算に応じて可能なデザインやアレンジを提案することもありますね。 結局のところ、お客様も一人の人間です。フランスの方々が好むスタイルやデザインも、お客様との交流を通じて理解を深めています。