パリを拠点にする日本人デザイナー、宮白羊の「Hakuyo Miya Paris」を紐解く
この作品の特徴は、腕のボリュームとギャザーにあります。通常はデザイン画の作成やパターン製作など、体系的なプロセスを踏むのですが、この時は時間的制約もあって、直接立体で制作する手法を取りました。
ほかには、音楽からインスピレーションを得て制作した服もあります。たとえば、デビッド・ボウイに似合う服を作ったこともありますね。
さまざまな経験を通じて、自身のデザインスタイルや制作プロセスが徐々に確立されていったように感じています。
ー服作り以外にも、アーティストの衣装なども手掛けていると聞きました。 大きなプロジェクトとしては、ロシアのキャラクター「チェブラーシカ」のグッズデザイン、そして現在も巡回しているエドワードゴーリー展のグッズデザインの担当しました。母がロシア語の通訳をしていた関係で、そのつながりから紹介を受けたんです。 衣装については、自分で作りたいものを作ってショーを開いたり、一点ものを制作したりしています。そうした活動を続けていくなかで、アーティストから衣装の依頼を受けることもあれば、こちらから提案することもあります。 また、私は音楽が好きで、興味深いアーティストを見つけると、自分から連絡を取り「この衣装を着ませんか?」と提案することもあるんです。 そうすると、返事が来ることもあります。最初は衣装の貸し出しから始まることもあれば、正式に依頼されることもあります。こうした活動を見て、オーダーの依頼をいただくこともありますね。
ノルウェーのシンガー・ソングライター兼音楽プロデューサー・オーロラとは、2016年に直接コンタクトを取って衣装を提供しました。 当時はまだデビューしたてで現在のように完全にメインストリームになっていませんでしたが、前年(2015年)に偶然彼女にライブを見る機会があって、是非彼女に衣装を着てもらいたいと思いコンタクトを取りました。
啓発活動の実践:小さな一歩から
ー環境問題についてnoteに書かれていた内容が印象的でした。宮さんの今のお考えをお聞かせください。 環境問題については、大量生産・大量消費の見直しが叫ばれていますが、実際の消費量はあまり変わっていないのが現状です。この問題は、単に環境だけでなく、貧困や資本主義のあり方とも密接に関連しています。大量生産による途上国での労働搾取、環境破壊、そして先進国での過剰消費という構造が環境に良いはずがありません。 環境に配慮した製品は往々にして高価であり、経済的に余裕のない消費者にとっては選択肢が限られます。 私は環境活動家ではありませんが、小規模ながら啓発活動を行っています。たとえば、「ファッションレボリューション」という団体と協力して、シャツ1着の製作過程を詳細に説明する動画を制作しました。