肌の水分量を測定するゴーグル型の装置、大阪の会社が神戸大と共同開発…目指すは「肌トラブルのない世界」
目指すのは、肌トラブルのない世界――。創業139年の老舗化粧品会社が、肌の適切なケアに欠かせない水分量のデータを継続的に測定できるゴーグル型のデバイス(装置)を神戸大と共同開発した。来年4月に開幕する大阪・関西万博の主要施設の一つ「大阪ヘルスケアパビリオン」でお披露目予定で、関係者は「肌も心も豊かで快適な生活を送れる『未来』を万博で見せたい」と意気込んでいる。(佐々木伶) 大阪市中央区の「桃谷順天館」。創業した1885年(明治18年)に発売した「美顔水」は日本最初の化粧水とも言われ、今も看板商品だ。 出展に向けて試作を重ねるデバイスの名は、「SKIN VOICE」。装着して1分ほどで肌に含まれる水分量の数値が測定され、結果に応じて、肌の状態に合った美容液などが近くにある別の装置から自動的に噴霧される仕組みだ。
万博後も改良を続け、日常生活を送りながら装着できるよう噴霧装置は内蔵させる計画という。継続的に「計測」と「ケア」を施すことで肌を良好な状態に保つ「未来の美容機器」として、実用化を目指す。 同社によると、アトピーなどの肌トラブルは、肌から蒸発する水分量が増えるタイミングで症状が出やすい。湿度などの周辺環境や時間帯による肌の変化をすぐに把握できれば、薬やスキンケア用品を効果的に使うことができる。 だが通常、肌のハリの度合いや水分蒸発量などのデータを専用の機器で測定するには、1時間近く特定の場所にとどまる必要がある。このため、肌に起きる変化を即時に知ることが難しかった。
こうした課題を解決しようと、新規事業を手がける部署「桃谷総合文化研究所」の宇山彩香さんが2017年、「ウェアラブル端末」を専門とする神戸大の寺田努教授グループに「常に肌の状態を知り、ケアできる装置」の共同開発を打診し、プロジェクトが始動した。 「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げる万博への出展は、「大阪を拠点に成長してきた化粧品メーカーとして、次世代や世界に新しいスキンケアを発信したい」と決めた。期間は、創業140周年を迎える6月10日から1週間。宇山さんは「万博はお客さんから直接意見を聞ける貴重な機会。多くの人に体験してもらい、改良に生かしたい」と話した。
◆大阪ヘルスケアパビリオン
大阪府と大阪市、大学や企業が出展し、「いのち」や「健康」をテーマに未来の暮らしを体感できる展示を行う。目玉は、会場で測定した健康データを基に生成された、25年後の自分をアバター(分身)で見られる「REBORN体験」。