専門家に聞くネットバンキング不正送金対策の最前線
ネットバンキングはパソコンやスマートフォンからいつでも送金や残高確認ができて便利な一方で、そのネットバンキングを狙った不正送金事件が増加の一途を辿っています。銀行にとってこうした事件の増加はネットバンキングそのものに対する顧客の信用を損なう死活問題であり、早急な対策が求められるところですが、銀行はこのネットの脅威に対してどのような姿勢で臨んでいるのでしょうか。ネットバンキングを狙った不正送金事件に対する専門家の声と共にレポートします。
増加するネットバンキングの不正送金、専門家に聞くその手口
まずは、ネットバンキングにおける不正送金の実態について整理しましょう。警察庁が今年2月に発表した『平成26年中のインターネットバンキングに係る不正送金事犯の発生状況等について』によると、2014年に発生したネットバンキングにおける不正送金事件の認知件数は1876件。被害額は約29億円にものぼります。今年に入ってからも、事件数が減少する兆候は見られず、セキュリティソフトで駆除してもパソコンの設定が改編されていて暗証番号を抜き取り不正サイトに誘導され続けるマルウェアや、パソコンを乗っ取った後にその復旧のために金銭を要求する身代金要求型不正プログラム(ランサムウェア)といった新たなタイプの犯罪が多発しています。 近年のネットバンキングにおける不正送金について、ネット犯罪に詳しい株式会社ラックの取締役で、内閣官房 情報セキュリティ政策会議や警察庁 総合セキュリティ対策会議などの委員を歴任している西本逸郎氏によると、その手口は狡猾になったコンピュータウイルスによるものと、従来から行われているフィッシングと呼ばれる騙しの手口(偽物のサイトを用意しておきメールなどで巧みに誘導してIDやパスワードなどを騙し取る手口)の2つに大別されるといいます。 「2012年後半からウイルスを使った手口が増加し、それに伴い被害額も2012年の4,800万円から2014年の29.1億円と激増しています。銀行側の対策も進んでおり個人の被害件数は減っているものの、被害額は微減なので、1件あたりの被害額は増えているのではないかと危惧しています」と西本氏はコメント。フィッシングよりもウイルスを使った不正送金被害が大きいのではないかと推測しています。