専門家に聞くネットバンキング不正送金対策の最前線
銀行のセキュリティ対策、専門家はどう評価する?
ラックの西本逸郎氏は、こうした銀行のスマートフォンを活用したセキュリティ対策について「とても良い動きですし当然のことと思います。実際に行った取引を別系統で確認を取る『トランザクション認証』は効果が高いことはわかっていましたが、パスワード発行器(セキュリティトークン)を使ったワンタイムパスワードやトランザクション認証にはその機器を使わなければなりませんでした。 その為、導入コストや時間がかかることと、多数の銀行に口座を持つ利用者は複数のトークンを管理し持ち運ばなければならないなどの理由から、導入が進んでいなかったのです。その点、スマートフォンをトークンとして活用するものは、利便性を損なわずに高いセキュリティを低コストで確保できます。今後はそれさえ乗り越えるほどに悪質化することも懸念されますが、現在取り得る対策の中では最良な対策だと考えられます」と評価しています。 しかし一方で西本氏は、「トークンやスマホを使った認証強化については任意になっている銀行が大半で、利用者自身が申し込まないと使うことができません。その背景には、預金者が認証強化で一手間増える事を敬遠することにあります。そのため普及が進まず、銀行共通の悩みともなっているようです。消費者には、銀行が提案している新しいセキュリティも率先して取り入れ、賢明な利用者になって頂きたいですね」ともコメントしています。 銀行が用意している様々な安全対策を活用するか否かはユーザー自身の判断に委ねられています。ユーザーの対策活用にばらつきがあるうちは、活用していないユーザーを狙った悪意のあるユーザーによる犯罪が減ることはなく、ネットバンキングを利用するユーザーは、様々な銀行の安全対策を活用しながら「自分の身は自分で守る」という高い意識を持つ必要があると言えるでしょう。 (執筆:井口裕右/オフィス ライトフォーワン)