「第二のニセコ」候補・白馬に外国人が来る理由 文化や食でなく…コスパの良さが決定打に
2024年9月に発表された「都道府県地価調査」において、世界的半導体企業「TSMC」のある熊本に次ぐ上昇率を記録した長野県白馬村。 インバウンド客数の増加とそれに伴う不動産価格の向上により「第二のニセコ」ともいわれる白馬村が、外国人観光客を呼び寄せる理由とは。同村の外国人協会代表で宿泊ビジネスを展開するアメリカ人事業者のイアン・ミラーから話を聞いた。
「お金持ちでカッコいい日本人」が来日のきっかけに
F ──ミラーさんは白馬村の外国人事業者の団体であるHIBAの代表ですね。なぜ、アメリカ人のあなたが白馬でビジネスをすることになったのでしょうか? ミラー 僕はオレゴン州の有名な山・マウントフッドの近くに住んでいました。 マウントフッドは1年中スノースポーツが楽しめるのですが、90年代中盤くらいから日本人スノーボーダーが増えました。当時の日本人はすごくお金持ちで、スノーボードが抜群にうまくて。「なんてカッコいい人たちなんだ」と感銘を受けたのを覚えています。 不思議だったのが、彼らのほとんどが英語を話さず、僕らも日本語を話さないことでした。その頃、僕は12歳でしたが「日本語が話せると良い仕事が見つけられそう」と思ったのが日本に関心を持ったきっかけです。 日本語を学びはじめた僕の日本への興味は、どんどん深くなっていきました。大学時代に日本に留学し、そのまま日本で外資系証券会社に就職しました。 東京で働いていたとき、白馬に行きました。白馬は東京からアクセスが良く、スキー場も広く、雪質もいい。「ここでビジネスがしたい」と思い、貸別荘を購入したのをきっかけにホテル事業まで手を広げました。約10年前のことです。 ──ちょうどその頃から、日本のスキー場に来る白人観光客は一気に増えました。何があったんでしょうか? ミラー そもそものきっかけは、2001年の「アメリカ同時多発テロ事件」ではないかと思います。旅行好きのオーストラリア人たちは、事件発生から数年間はテロが怖くて海外旅行に行きづらくなってしまいました。 そこにきて、時差がほとんどなく、テロの脅威がない安全な国である日本が彼らの旅行先候補に挙がるようになったのでしょう。はじめは少数のオーストラリア人旅行者たちが日本のスキー場に来るようになり、その雪質や居心地の良さが評判となり、どんどん増えていったのだと思われます。白馬に関しては、東京からのアクセスの良さが多いに関係しているように思います。 もう1つの重要な背景として、北米におけるウインターレジャー施設の急激な物価高騰が挙げられます。 北米にはウィスラーやレイクタホなど、世界的に有名なスキー場がいくつもあります。ですが、これらをある民間企業が独占的に運営するようになってから、値段が跳ね上がりました。ただでさえあらゆる物価が上がっているので、スキー場の価格はとんでもない金額になっているのです。 たとえば現在、北米の有名スキー場の1日券は日本円で約3万円もします(日本は5000~8000円ほど)。現地でレッスンを受け、飲食や宿泊までしようものなら、1人1日20万円に達してもおかしくありません。1人で行くのならなんとかなっても、家族連れや若者グループには苦しい金額です。 オーストラリアも例外ではなく、同国内のスキー場も北米に連動するようにして物価が上がっていきました。 世界にあるスキー場の多くは、アイスバーンがむき出しになっていたり、人工雪で積雪量を保っているところがほとんどです。毎日のように降る雪によってパウダースノーが保たれ、安価かつ安全な日本のスキー場は、外国人にとっては非常に魅力的なのです。