楽天Gの高利回りドル債、三木谷氏を待ち受ける課題暗示
個人向け社債
社債償還に対処するほかの選択肢として、日本の個人投資家に目を向けることなどもある。元バンカーでハーバード大学経営大学院に通った三木谷氏は、元ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手を擁する東北楽天ゴールデンイーグルスの球団名にちなんだ個人向け社債を発行したことがある。
広瀬研二最高財務責任者(CFO)は2月の決算説明会で、個人向けの社債の一部は「能動的にリファイナンスすることを検討」すると発言。リテール市場は投資家層が厚く楽天Gの認知度も高いため、借り換えリスクはわずかだと述べた。
国内の証券会社は楽天Gの個人向け債をすべて売り切るのは難しいかもしれないと、事情に詳しい2人の関係者は話した。これに対し、広報担当者は11日、同社の知名度やブランド認知力を踏まえると、個人投資家向けへの販売についてはあまり心配をしていないとの認識を改めて示した。
楽天Gは11日、海外市場で償還期間5年の円建て私募債を利率6%で500億円発行すると発表した。25年以降に償還期限が到来する既存社債の返済の一部に充てる予定だ。
ブルームバーグ・インテリジェンスのクレジットアナリスト、シャロン・チェン氏は11日のリポートで、「楽天Gの海外市場への依存は、国内の投資家や金融機関からの支援が弱いことを示唆している」と分析した。
先週のドル建て起債は社債投資家にとって安心材料となり、楽天Gの信用リスクを表すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は起債後に2月下旬以来の大幅低下となった。
もう一つの明るい兆しは業務の改善だ。楽天Gは1日、銀行と証券、クレジットカード、保険などのフィンテック事業全体を一つのグループに集約することを検討していると発表した。これが追い風となり、株価は年初来の上昇率を東証株価指数(TOPIX)の2倍以上となる40%超まで広げた。ただし5年前と比べるとなお18%ほど低い。
楽天Gは2月の決算説明会で、モバイル部門の黒字化に向けた取り組みの一環として通信品質を改善しており、契約回線数(MNO)を23年末の600万から今期中に800万-1000万に増やすことを目標に掲げた。三木谷氏は今週、自身のX(旧ツイッター)にMNOが650万を超えたと投稿した。