急増する「希望退職」に潜む経営リスク…資生堂とソニーの“見過ごせない”違い
2024年に入って、希望退職募集の発表が目立つ。大手だけでも、資生堂、ソニー、オムロン、ヨーカ堂、ワコールなどが希望退職の募集を行うと発表している。 【全画像をみる】急増する「希望退職」に潜む経営リスク…資生堂とソニーの“見過ごせない”違い 加えて直近でも、東芝が2027年3月までの中期経営計画で「最大4000人」の人員削減を発表したほか、住友化学も2024年度末までに、日本国内のグループ全体の4000人を人員削減を発表したばかりだ。 東京商工リサーチによれば、2024年4月23日の段階で、「早期・希望退職者」の募集が判明した国内の上場企業は21社で、国内の対象人数は3724人。前年同期比3倍に達しており、すでに2023年の年間の募集人数(3161人)を上回っている。 日本の上場企業は2月、3月決算が多いので、通期業績の着地を見ながらこの時期コスト削減を発表するというのは分かる。ただ、今回の希望退職の募集は規模が大きく、例年とは明らかに異なる状況で、今回希望退職をしている企業のなかには、「戦略なき希望退職」に突き進んでいるように見える企業もある。 詳しくは後述するが、日本においては「解雇」が厳しく規制されていることもあり、今回のような希望退職が募集されることが多い。ただ希望退職には「優秀な人材こそが流出」してしまうリスクもある。 三浦毅司:日本知財総合研究所代表取締役。第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行後、NIS(現R&I)に転籍。ゴールドマンサックス証券東京支店に移籍後はクレジットアナリストを担当。モルガンスタンレーMUFG証券、クレディスイス証券を経て、2018年からは特許事務所に転籍。現在は知財からみた投資情報発信を行っている。
資生堂やワコールは国内事業が低迷
今回希望退職が発表された部門の業績を見ると、事業部門としては好調を維持するソニーや、急に業績が悪化したオムロンと違って、資生堂の日本部門、イトーヨーカ堂、ワコール国内部門は、ここ数年業績の低迷に苦しんできたことが分かる。 特にイトーヨーカ堂は赤字続きで、しかも赤字が拡大傾向にある。また、資生堂やワコールの国内事業も長期低迷下にあり、過去にさまざまな対策を打ってきたことが予想されるが、業績改善につながっていないことが見てとれる。 今回の大型希望退職募集は、この3社にとっては万策尽きての窮余の策といってもいいだろう。