「石川、能登のために」。被災地域出身選手・廻智樹の“白山愛”「僕はここで、上を目指す」|F2で紡がれる戦闘記
「がんばろう石川」の旗を見ると、頑張れる
──白山は今シーズンF2参入後初の3連勝や勝ち越しを決めました。強さの要因はなんでしょう? 震災の影響から「石川のために頑張ろう」とチームが一つになっていることだと思います。練習でも毎日、いろんな方からのメッセージが書かれた「がんばろう石川」の旗を掲げていて、それを見ることで本当に頑張れるんです。 試合で負けている時でも、ベンチからは「俺らがやるぞ!」という声が挙がってきますし、みんなポジティブな発言をしています。当たり前のことかもしれないですけど、ゴール前で体を張るにしても気持ちの大きさは本当に重要で、プレーの質が変わります。これまでのシーズンとの違いを感じていますし、「石川のために」「能登のために」という強い気持ちをもって戦っていることでチームが結束し、結果につながっていると感じています。 ──廻選手から見て、白山はどんなチームですか? 鈴木(修平)代表がいつも言っているのは、うちのチームは「勝って愛されるのではなく、愛されて勝つ」ということです。その言葉を受けて、自分たちもファン·サポーターや地域の人たちに愛される存在になりたいと思ってプレーをしています。そういった意識が強いからこそ、よりいいチームになれていると感じています。 ──鈴木代表は、クラブを象徴する方ですよね。 チームや地元愛が一番強いのは代表かもしれないですね。いつも熱くしゃべる人で、「まずは自分たちが白山を好きになろう」と話してくれます。クラブや地元に対する想いの強さは、僕ら選手に大きな影響を与えていると思います。 ──代表がアウェイに帯同すると「負ける」というジンクスがあったとか(笑)。 そんなことがありましたね(笑)。逆転勝利した水戸戦(11月20日の第11節、○6-4)も、見ていられなくなった代表が席を外している間に巻き返しましたから。でも、ことぶきアリーナ千曲で戦ったあの水戸戦は、長野と共同開催したホーム扱いでした。長野さんも、自分たちにいい環境を用意してくれて「ホーム」だったから勝てました(笑)。 ──鈴木代表は「負けると選手が謝りに来る」と話していました。その想いはどこから来るのでしょう? 選手それぞれが「石川を背負ってプレーしている」という責任を感じているからだと思います。それくらい、1試合1試合に懸ける気持ちが強いので。今年は、練習中からお互いに言い合うことも多く、それでいてオンとオフの切り替えがしっかりしているので、チームとしていい雰囲気をつくれていると感じています。 ──震災の影響によりホームの松任総合運動公園体育館が避難所となりました。その後、6月23日の第4節は、観客席のない若宮公園体育館で試合を行いました。その時はどんな思いで戦っていたのでしょうか。 FリーグTVで見てくれる人も多かったですし、観客がいる·いないに関係なく、自分たちの結果で勇気づけることにつながればいいという気持ちで、みんながプレーしていたと思います。でも、松任総合運動公園体育館を使えるようになったホーム2戦目の北海道戦(7月28日の第9節、○9-3)を、お客さんが入った状態で迎えられたことがうれしかった。さらに力を出せましたし、だからこそ大勝できたと思います。ファン・サポーターの声援が力になることを改めて感じました。 ──このチームを、もっと多くの人に見てもらいたいですね。 はい、たくさんの人に見てもらいたいです。12月1日の葛飾戦(第17節、○3-1)は、自分も「1,000人以上が入った会場でプレーしたい」と話していたのですが、フロントのみなさんが頑張ってくれて多くのお客さんが来てくれて、本当に最高でした。人生で一番プレーしていて気持ち良かった。試合中に「1,178人です!」とアナウンスが流れて、プレー中でしたけどすごく驚いて、思わず拍手しそうになりました(笑)。 フットサルってゴール前の攻防も激しいので、自分のおばあちゃん、おじいちゃん世代が見に来ても「サッカーよりおもしろい」と言ってくれます。もっともっと、フットサルの認知度も増やしていきたいですね。 ──白山のホームゲームは70代、80代のお客さんも多いそうですね。 そうなんです。自分のおばあちゃんの知り合いも見に来てくれますし、家の前の畑で働いているおじさんも見に来てくれます。そうやって、自分の周りからもヴィンセドールが浸透していくことを感じられるのは、すごくうれしいです。