弱い実質GDPと強い企業収益 日本の景気どうなの? GDP前期比マイナス予想
15日に日本の10-12月期国内総生産(GDP)の速報値が公表されます。第一生命経済研究所の日本経済予測チームは実質GDP成長率が前期比でマイナス成長に陥ったと予想しており、仮にそうなれば直近4四半期で2回目のマイナス成長となります。経済の強さをGDPで議論した場合、目下の成長率はお世辞にもよい数値と言えません。 しかしながら、企業業績に目を向けると日本企業の経常利益は過去最高を更新しています。ちなみに、ここで用いた経常利益額は中小企業も含んだ数値なので、上場企業に限った話ではありません。 「弱い実質GDP・強い企業収益」という一見すると不可解な数値は、どちらが実態を反映しているのでしょうか。また、なぜこのような違いが生じるのか、日本経済をさまざまな切り口で考えみたいと思います。
マイナス成長でも、日本経済が弱いとは言い切れない
結論を先取りすると、いまの日本は実質GDPがマイナス成長に陥っても、不景気という言葉がなじむほど経済が弱いとは言い切れません。GDPには海外部門(日本企業が海外で稼いだ利益等)が含まれないという問題もありますが、日本経済は人口減少・高齢化という問題に直面しているため、実力ベースの成長率が低下しているからです。一般に人々が景気の強弱を肌で感じるのは、その国の実力(ポテンシャル)に対してその時々の経済成長率が上振れているか下振れているかで決まります。
この実力ベースのGDP成長率を潜在成長率といいます。端的に表現すると、景気がよくも悪くもない自然体の成長率です。そうした状態では、企業は手持ちの生産・営業能力、すなわち設備・雇用に過剰感も不足感も生じませんので、失業率が大きく変化することもなければ、設備投資が加速することもなく、またそうした下では基本的に物価も変動しません。この潜在成長率は内閣府の推計によると+0.5%程度とされています。つまり、いまの日本経済はわずかプラス0.5%の成長が巡航速度なので、人々の景況感に影響を与えない程度の逆風が吹いただけでマイナス成長に陥ってしまいます。