弱い実質GDPと強い企業収益 日本の景気どうなの? GDP前期比マイナス予想
経済成長率がゼロ%程度で、なぜ日本企業は過去最高益を更新できるのか?
それにしても、なぜ、経済成長率がゼロ%程度なのに日本企業は過去最高益を更新できるのでしょうか?理由はさまざまですが、以下の要因が大きく影響しています。 「実質GDPは経済の動きを「数量」ベースで捉える概念なので、円安・原油安・物価上昇という企業の売上や利益“額”に与える影響が除去されている」 上述のように日本の潜在成長率は人口構造が高齢化する下で低下基調にあるのですが、近年は次のことが言えます。 1.デフレ脱却が国策となるなかで過度な値下げ競争が一服しつつあり、値上げが受け入れられやすくなった 2.円安による(円ベースでみた)輸出金額の増加 3.原油安によるコスト削減などが追い風となって、経済を“金額”で捉えた名目GDPあるいは企業収益は増加基調にある なお、GDPは企業の「営業利益+人件費」と言い換えることができますので、単に企業が人件費を削減して利益を絞り出すだけではGDPは増加しません。つまり、企業部門だけが得をして家計(労働者者)が割を食っているのではなく、国全体の稼ぎが金額ベースで増加しているということです。 まず1については多くの説明が不要だと思いますので省略します。
2を説明するのに、いちばんわかりやすい例が輸出です。同じ図に輸出数量、輸出金額を示しました。ここで、「円安に誘導しても輸出は全く増えていないので、円安政策は日本経済回復に意味がない」との指摘を思い出してください。 そう主張する人が論拠としているデータは実質輸出、あるいは輸出数量です。一方、(おそらく民間企業にとってより重要な)輸出金額は円安の影響によって大きく増加しています。実質(≒数量)でみた輸出は増加していませんが、名目でみた輸出は著しく増加していて、実際、輸出を手掛ける企業は収益が潤っています。 3については、原油安によって企業の利益額が押し上げられるからです。原油高のときに企業がコスト増の大部分を負担して値上げを回避するのと同様に、企業は原油安でセーブできた額を直ちに製品価格に反映しないため利益額が押し上げられます。もっとも、企業は原油価格が下落しても輸入量を増加させることはないので、実質(≒数量)でみた指標は変動しません。よって実質GDPを大きく変動させることはありません。