なぜ今季は投高打低なのか 投打の成績に偏りが大きい“珍現象” 現場や元1軍監督の声
今季のプロ野球は投打の成績が、偏りの大きい“珍現象”となっている。セ・パ両リーグで打率3割以上の打者が3人のみ。セ・リーグでは防御率1点台の投手が7人いる。極端な投高打低が続いている中、元1軍監督や現場の関係者に聞いて、その要因に迫った。 今季の投打の数字が多くを物語っている。投高打低の珍事態。両リーグで打率3割打者は、セでは1位のヤクルト・サンタナ(・314)と2位の中日・細川(・302)、パでは1位のソフトバンク・近藤(・316)の3人しかいない。2リーグ分立後、打率2割台の首位打者は皆無だ。投手の成績も顕著で、特にセでは防御率トップの広島・大瀬良(1・37)ら7人が1点台。規定投球回に達していないが、中日・高橋宏は10勝1敗で防御率は驚異の0・68という“隠れ1位”だ。 なぜ球界で、こうした現象が起こっているのだろうか。元西武監督の田辺徳雄氏(58)=現西武プロスカウト=は「投手は150キロが当たり前。真っすぐのスピードが速くなっている」と分析。田辺氏は西武時代の89年にリーグ2位の打率・316、92年には同3位の・302をマークした好打者で、コーチとしても中村剛也、栗山巧らを指導した名伯楽だ。最近の傾向として「球種も増え、カットボールやツーシームといった速い系のボールに、打者が真っすぐだと思って打ちにいっても、微妙にタイミングや芯を外されている」と説明する。 今季の序盤は「ボールが飛ばない」という声をよく聞いたが、投手の能力が急激にレベルアップしたことも要因の一つだろう。その背景には「トラックマン」や「ラプソード」といった球速や回転数、ボールの変化量などを計測する機器が導入され、明確な数値を見て参考にできるようになったこともある。セ・リーグのスコアラーは「みんな球が強い。投手がボールに強さを求めている」と明かす。 投手の速くて強いボールに、打者も対抗策を練ってきた。近年、打者が公式戦で使うバットは軽量化されているという。球界関係者は「投手の速い球に負けないように操作性を考え、最近は打者のバットが軽くなっている」と明かす。かつてバットの重さは900グラム台がベースだったが、今では「900グラムに限りなく近い800グラム台が主流」(セ・リーグ関係者)。パ・リーグ関係者によると以前に比べれば「100グラムぐらい軽くなっているんじゃないか」という。 速く、力強いバットスイングをして打球速度を上げ、安打の確率を高めたい、という打者の狙いもあるだろう。ただ、バットの軽量化は必ずしも好影響ばかりではなさそうだ。パ・リーグ関係者は「バットの芯やヘッドが軽くなるから打球が詰まることもある。重めのバットに比べればボールは飛ばない」と分析する。別の球界関係者も「バットが軽いと強いボールに負ける。バットが重い方がボールをつぶせる」と説明した。 今や投高打低は球界のトレンドと言ってもいいだろう。投手の疲労度が高まる本格的な夏場、終盤を迎えても珍現象は変わらないのか-。興味は尽きない。