日本株の「バリュー」と「中小型株」に大きな魅力、イーストスプリングの着目点
イーストスプリング・インベストメンツの日本株運用チームは2月に「金融正常化は日本株に好材料」と題したレポートを発表し、「日本市場が今後も強力かつ魅力的なリターンを提供し続けることに楽観視している」と日本株式市場に強気の見通しを打ち出した。特に、これまで市場をけん引してきた「バリュー(割安)株」と、大型株に対して出遅れ感が強い「中小型株」に妙味があるとしている。レポートは同社シンガポール拠点の日本株式運用責任者のIvailo Dikov氏と、クライアント・ポートフォリオ・マネジャーのOliver Lee氏が共同で執筆した。海外の拠点からの日本株式に対する評価は興味深い。
日本株は2023年に世界の主要株式市場をアウトパフォームし、年間騰落率でTOPIX(東証株価指数)は25%、日経平均株価は28%という上昇を記録し、33年ぶりの株価水準になった。2024年になっても日本株の上昇は続いているが、イーストスプリングの日本株運用チームは、「複数の日本企業のCEOとの対話の中で『価格規律と利益改善が大幅に進んできており、日本企業は新たな局面を迎えている』との印象を持った」と強調する。それは、日銀短観でも日本企業が2023年に入ってから過去20年間のどの時期よりもコスト上昇分を価格に転嫁できるようになったという点を指摘しており、「企業ファンダメンタルズの改善が株価をけん引すると言った近年にはあまり見られなかった『ある意味で正常化した市場環境』が今は見受けられるようになっている」と現状を分析している。
そして、このような「正常化した市場環境」を支えているのが、日本政府が2013年に打ち出したコーポレートガバナンス(企業統治)の強化、そして、2015年に導入されたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)など過去10年間にわたる改革、そして、2023年3月に東証が要請した株価純資産倍率(PBR)が1倍を下回る企業に対し「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」などがあるとする。イーストスプリングでは、東証の要請などについて「日本企業は横並び意識が強いため、この要請に出遅れたと見られることを嫌う多くの企業が、一斉に改善に向けて活発に取り組み始める可能性がある」と期待している。