知能が高い人が、人生で成功するとは限らない...本当に必要な“EQ”とは何か?
ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。 【書影】社会で成功するためにはIQではなく、EQだ! 日本人の価値観を変えた『EQ こころの知能指数』 今回、紹介するのは『EQ こころの知能指数』(ダニエル・ゴールマン著、土屋 京子訳、講談社)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。
EQとは何か
EQという言葉は一般用語として定着してからずいぶん経っています。そのEQという概念を広めた本書は1995年に刊行されて以降、世界で500万部、日本でも90万部の販売部数を誇るといわれるロングセラーです。 EQはIQとの対比で用いられます。本書の前書きには、「IQの高い人が必ずしも成功せず平均的なIQの人が大成功したりする背景にはどのような要因が働いているのだろうか」という問いが書かれています。また著者は、「社会に出て成功するのに必要な能力はIQが2割、EQが8割」とも言われています。 ではそのEQとはどのようなものでしょうか。こころの知能指数とも表現されるEQを表す能力を列挙します。衝動をコントロールする、快楽を我慢できる、自分の気分をうまく整えられる、感情の乱れに思考力を阻害されない、他人に共感できる、希望を維持できる。どれも心が成熟した人が備えた能力ともいえそうです。 IQは経験や教育の力で大きく変えられない一方で、EQは重要な部分を子供のうちに教えれば後に向上させることが可能です。そして、EQは知能をはじめとするさまざまな能力をどこまで活用できるかを決めてしまうので、個々の能力の上位概念となる「メタ能力」とでも呼ぶべきものです。以降でもう少し、EQの理解について掘り下げてみましょう。
7種類の知性
ハーバード大学教育学部の心理学者ハワード・ガードナーによれば、人生に有用な知性は広範多岐にわたるといいます。大別すると7種類で、「言語的知性」「論理数学的知性」「空間的知性」「身体運動的知性」「音楽的知性」、そしてEQの領域となる「対人知性」「心内知性」で構成されています。 なお、IQの値はこの7種類の知性を予測できる指標とはならないこともわかっています。特にEQとのかかわりの強い「対人知性」は他人を理解し、まわりの人と協調して動くにはどうすればよいかを洞察する能力です。そして「心内知性」は、自分自身の内面に向けられる知性であり、自分の中にある感情を理解して、優れた行動指針を生み出す能力となります。 ここまでEQについて様々な特性を触れてきました。多くの場面でEQが発揮されることが想像できるはずです。家庭では、円満な夫婦関係を構築していくために、パートナーがどんなことを望んでいるかを想像することが大切になるでしょう。友人関係も同様の能力が求められることは明らかです。 仕事でも一人のIQ的知性で完結できることはほとんどありません。社内外の様々な人の協力を得ながら仕事を進めることがほとんどでしょう。営業では商談相手が考えていることが洞察できるか、リーダーであれば自分が何を目指しているのか、メンバーが何を考えているかを深く理解できる能力は極めて重要です。 私生活でも仕事でも活用される場面の多いEQは、人生をより豊かなものにするためにとても重要な役割を果たすのではないでしょうか。