韓国大統領「非常戒厳」宣布で起死回生狙ったか
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は2024年12月3日夜、「非常戒厳」を宣布した。 尹大統領は大統領府で国民に向けた緊急談話を発表、「野党による弾劾で行政府がマヒしている」と述べ、国会での野党側の行為が「内乱を企てる明白な反国家的行為」とし、従北(北朝鮮に追従する)勢力を排除し、自由な憲政秩序を守るために非常戒厳を宣布すると明らかにした。 ■44年ぶりの非常戒厳 韓国での戒厳令の宣布は、1980年に当時の全斗煥大統領が宣布して以来44年ぶりとなる。
戒厳令は大韓民国憲法第77条により、戦時や事変、これに準じる国家的な非常事態において、秩序の維持が必要だと判断された時、大統領が軍隊を動員して治安・司法権を維持する措置だ。発令には国防相と行政安全相が建議する形になっている。 非常戒厳が宣布されると、大統領は遅滞なく国会に通報し、国会は在職議員の過半数の賛成で解除を要求できる。 尹大統領が非常戒厳を宣布したことで、国防省は12月3日、全軍の主要指揮官会議を開催し、非常戒厳とそれに備えた体制を強化するように指示が出されたことを明らかにした。
尹大統領が発布した非常戒厳の背景をみると、2022年に尹政権が発足して以降、政府官僚に対する22件の弾劾訴追が国会で発議されている。2024年5月に行われた総選挙で敗北した後の国会以降も、議席の過半数を占めている最大野党「共に民主党」によって10人の弾劾訴追を進めていると述べている。 さらに裁判官判事を脅し、多数の検事を弾劾するなど司法業務がマヒしており、さらに行政安全相、国防相などを弾劾しようとする「共に民主党」が行政府をマヒさせていると指摘した。また、国家予算案の処理も滞っていると述べている。
国家予算案を野党側が通過させないまま、国家財政を籠絡し国家予算案さえ政争の道具としていることは、「立法府による独裁」という認識を示して、非常戒厳に至った理由として尹大統領は挙げている。 一方で、尹大統領は政権発足後、支持率が20%台と低い水準が継続していた。2024年11月には1期5年の任期が残り半分となったが、支持率は17%と低迷したままだった。 ■支持率低迷にスキャンダルも発生していた さらにこれまで夫人である金建希(キム・ゴンヒ)氏が国会議員の補欠選挙で与党候補の公認に不当に介入したという疑惑も持ち上がるなど、野党側との対立を深めていた。このような状況もあり、起死回生を狙っての非常戒厳を宣布したと思われる。