能登半島地震から1年 「記念日反応」とどう向き合う?…症状は「気分が落ち込む」「眠れない」「映像を見るとつらい」
能登半島地震が発生してから1月1日で丸1年がたちます。地震に関するニュースが増えてきて、不安や悲しい気持ちになる人も多いと思います。この時期をどのように過ごせばよいのか、目白大学教授の重村淳さん(日本トラウマティック・ストレス学会会長)に聞きました。(聞き手・利根川昌紀) 【表】うつ病にならないために、やめておきたい七つのこと
大雨災害の影響も
――能登半島地震で被災された方々の心は今、どのような状態でしょうか。 心の状態は、災害が起きてから時間の経過とともに変化します。 発生から数日間は、現実を受け止めきれずにいる「ぼう然自失期」、その後、1か月くらいは、災害復興に向けてみなで頑張ろうと気持ちが前向きになる「ハネムーン期」に。そして数か月くらいたつと、災害に関する報道が減って世間の関心も薄れて、厳しい現状に直面する「疲労期(幻滅期)」、それ以降は災害を乗り越えていこうという気持ちになる「再建期」に入ります。 能登半島では、1月の地震のあと、9月に大雨災害もありました。復興に向けて取り組んできたものが振り出しに戻されてしまったという人もいると思います。現地の人たちは今、疲労期、もしくは再建期の辺りにいるんだろうと推察します。 ――節目を迎えて、1年前のことを思い出す人は多いと思います。 災害発生の月命日や、1年後など、節目が近づくと気持ちが落ち込んだり体調を崩したりする人はいます。「記念日反応」と呼ばれるものです。その日が来るまでは、得体の知れない不安に襲われ、中には涙を流す人もいます。
PTSDとは
――涙を流すとは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症していることもあるのでしょうか。 悲しい出来事があって涙を流すというのは、人としてごく自然なことです。涙を流したからといって、必ずしもPTSDを発症しているわけではありません。 PTSDは、とてもショックな出来事を経験した後、自分の意思とは関係なく思い出したくない情景が頭に浮かんでしまったり、思い出す場面を避けたりする病気です。神経が過敏になり、ちょっとした物音でもびくびくしたり眠れなくなったりします。こうした状況が1か月以上続き、生活に支障が出てくるようだとPTSDと診断されます。こうした場合は、医療機関を受診し、治療が必要になります。 PTSDは、(1)災害による損失が大きかった(2)身近な人を亡くした(3)もともと心身に病気を抱えている――といった人が発症しやすいです。自分も被災しながら、支援活動に携わった人も発症のリスクは高いと思います。