なぜバッハ会長はワリエワ叱責のエテリコーチを批判したのか…真相を深掘りした海外メディアはIOCの対応を問題視
ワシントンポスト紙はバッハ会長の会見はワリエワのコーチ問題に目を向けさせIOCの役割や信頼性については説明責任を果たしていない狡猾な方法だったと非難した。 「バッハは(ワリエワを)心配しているように見えた。しかし、この騒動を引き起こしたIOCの役割を軽視した。五輪の指導者は、ドーピング常習国(ロシア)を長年にわたって特別扱いしてきたことで、ワリエワを守ることにも失敗したのだ。これに加えて、スポーツ仲裁裁判所も、このような馬鹿げたことへの扉を開いた決定を下したことで失敗した」 そして昨年の東京五輪、今回の北京五輪で、金メダル候補とされながらも、結果を出せなかった女性トップアスリートのテニスの大坂なおみ、体操のシモーネ・バイルズ、スキーアルペンのミカエラ・シフリンらの名前を挙げて「ワリエワは最も悲惨な崩壊だった。ドーピングスキャンダルに巻き込まれながらも出場を許された15歳の天才フィギュアスケート選手は無残な姿で退場した。若い女子フィギュアスケーターを使い潰して捨ててきたロシアの現状を考えると彼女の将来を一番心配すべきだ」と問題提起した。 米公共ラジオ放送のNPR電子版もバッハ会長の記者会見内容を伝える記事の中で、「バッハ会長は、ワリエワとそのチームメイト、そして五輪レベルで戦う他の若い選手たちへの懸念を繰り返し述べた。しかし、IOC会長は、すぐには何かを変えようとはしなかった」とここまでのIOCの対応を批判した。 最も詳細にバッハ会長の会見の背景を深掘りして批判したのが米ヤフーだ。 「IOCのバッハ会長は、ワリエワに『心を痛めた』が、すでに(選手らは)ダメージを受けていた」という見出しを取り「(IOCは)この問題への対応が遅れた」と叩いた。 同メディアは、バッハ会長が会見で、ワリエワやエテリコーチの指導姿勢についての批判に長い時間を割いた理由として、「バッハ会長は1時間の記者会見で、中国の人権問題、少数民族ウイグル族の扱い、あるいは彭帥に関する質問を避けることができた」と深読みした。あえて中国の問題を指摘されることを避けるため、ワリエワのコーチを批判して、マスコミが注目する部分をすり替えたというのだ。 その上で、「ワリエワが、薬物検査で陽性を示したことは、このティーンエイジャーが彼女の最善の利益を考えない人々に囲まれていると警告するアラームだった。子どもに薬物を投与することは、定義上、児童虐待にあたる。しかし、IOCの方針は、ドーピングに関する懲戒制度を第三者のアンチ・ドーピング機関や裁判所(スポーツ仲裁裁判所)に託すことだった。このシステムによってワリエワは陽性反応が出たにもかかわらず競技を続けることができたが、周囲に信頼できる人がいないため、この少女は五輪の悪役になってしまった」とIOCの対応のまずさを指摘した。
さらに国家ぐるみのドーピング違反が明るみに出たロシアをロシア・オリンピック委員会として五輪に出場させ続けたIOCの責任も追及。 「何も変わらなかった。これからもそうだろう。これが10年近く会長を務めてきたバッハ氏が築いてきた五輪なのだ。彼はたまたま木曜日にテレビでその堕落しきった姿を見ただけだ。そして彼は自分が見たものにうんざりした。私も同じだ」と皮肉を交えて批判した。 バッハ会長とIOCは、まだ調査中で結論の出ていないワリエワのドーピング違反問題を含めた北京五輪で噴出した様々な問題にどう具体的に対応するのか。世界は厳しい目で見守っている。