「急激な気候変動の影響で流産や早産、新生児の知的障害が増えている」と海外報告書が指摘…「洪水による妊娠喪失は10万件以上」とのレポートも
気候危機は、妊娠中の女性、胎児および新生児の健康に劇的な影響を与え、流産や早産の増加を引き起こしている。そして、第一線の科学者が発表した新たな報告書によると、この問題は気候変動の影響を減らす、あるいは気候変動に適応するための各国のアクションプランの“盲点”となっている。 【写真】同じ経験をした人の力になりたい…「流産したことを公表した10人のセレブたち」 ※この記事はイギリス版ウィメンズへルスからの翻訳をもとに、日本版ウィメンズヘルスが編集して掲載しています。
気候変動により流産や早産、新生児の知的障害が増えている
11月のCOP29(国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議)に参加するリーダーに向けた同報告書には、「気候変動によって妊婦、胎児、新生児に生じる病気や危害のリスクが増大しており、この数十年で成し遂げられた、妊産婦の健康とリプロダクティブ・ヘルスに関する進歩が逆転する恐れがある」と記されている。 また、気候・自然・社会科学の専門家チームも、世界的な気温上昇と海の急速な温暖化などにより、「地球の一部が居住可能な地域としての限界を超える可能性がある」と警告した。 この報告書によれば、地球の気候が極端になるにつれ、流産や早産、新生児の知的障害が増えている。
毎年「10万7000件以上の妊娠喪失」を引き起こしている可能性
南カリフォルニアの女性を対象とした研究でも、長期的な暑熱曝露と、早産や死産を含む深刻な分娩合併症の増加は「有意に関係している」ことが分かった。 妊娠中の女性800名を対象としたインドの研究では、暑熱ストレスを感じていると流産のリスクが2倍になることが判明した。 また、中南米・アジア・アフリカの33カ国以上を対象とした調査レポートによると、気候変動に関連する洪水は「これらの地域で毎年10万7000件以上の妊娠喪失を引き起こしている可能性」があり、貧困層や教育水準の低い女性は妊娠喪失のリスクが特に高い。
母親と新生児の安全を確保するアクションは少ない
にもかかわらず、国連に提出された199件の気候変動アクションプランの中で、妊婦と赤ちゃんの安全を確保するためのアクションに触れているのはわずか29件。それゆえに、この報告書の著者たちは、この問題を“盲点”とした。この報告書の共著者でアフリカ国際大学のアデレード・ルサンビリ助教授は「母親と新生児は保護されてしかるべき。気候変動対策には彼女たちの意見も取り入れなければならない」と本誌に語った。 「この報告書は、メタン排出量の増加から重要インフラの脆弱化まで、世界が地球規模の課題に直面していることを裏付けており、気温の上昇、海洋の不安定化、アマゾン熱帯雨林の崩壊により、地球の一部が居住可能な地域としての限界を超える可能性があることを示しています」と説明するのは、この報告書の作成に参加した組織の1つ、The Earth League(気候変動対策を推進する著名な研究機関および科学者の国際同盟)共同議長のヨハン・ロックストローム教授。「しかし、この報告書は明確な道筋と解決策も提示しており、緊急かつ断固たる行動を取れば、取り返しのつかない事態を避けられることも証明しています」