「騙される奴は頭が悪い」と見下す人ほど騙される…脳科学者が断言「高学歴・高収入・高地位でもコロッといく」
■ハイスペックこそ危険 騙される人の4つの傾向 ここまでは人が騙されてしまうメカニズムを解説してきましたが、ここからはどのような人が騙されやすいのか考えていきましょう。 ただ、冒頭でも述べたように、“そもそも人間は騙されやすい”ことを念頭に置いてください。人間は先天的に、みな平等に騙されやすい性質を持ち、ワーキングメモリーの容量も個人差はあれども大体は同じです。心理学などにおいても、人の性格や属性などのパーソナリティーで騙されやすいかどうか、はっきりと検証できている研究は出ていないのです。 しかし、もともとの傾向以上に、ストレスを抱えていたり、感情が不安定だったりと、その人が置かれている社会的状況や精神状態によって、後天的に騙される可能性が高くなります。これから解説する「騙されやすい人の特徴」は、あくまでも「○○だから騙される」とは理解しないでください。誰でも騙される可能性があるということが前提にあります。 ワーキングメモリーがいっぱいになりやすい人には、大きく4つのパターンが見て取れます。 まず1つ目が「ストレスに弱い人」。マイナスな感情で脳がいっぱいになってしまえば、ワーキングメモリーもすぐに圧迫されてしまいます。会社で嫌なことばかり続いているときや、プロジェクトでプレッシャーを感じているときなど、誰でも思い当たるフシがあるのではないでしょうか。 2つ目は「社会的に孤立している人」。普段から他人とコミュニケーションを取る機会が少ない人は、他人から声をかけられただけで、耐性がないぶんワーキングメモリーを消費しやすくなってしまいます。 3つ目が「共感性の高い人」。これは先ほどのプラシーボ効果に通ずる話で、感情的になるほどドーパミンが過剰に分泌され、脳のメモを消費するだけでなく、他人の話を信じやすくなり、そのぶん情報を精査する能力にも欠けてしまうと言えます。 そして、4つ目が「衝動的な人」。自分勝手な行動をしたり、相手の話を遮って喋ってしまったり、あるいはストレスや不安を過度にお酒やギャンブルなどで発散してしまうのも衝動性が高い証拠です。こうした性質の人は普段からワーキングメモリーの働きが弱い傾向にあると検証されています。 起業家の人はアントレプレナーシップ(新たな価値を創造し、リスクを恐れずに挑戦する精神や姿勢)を持ち合わせているケースが多く、行動力や決断力に長けている印象を受けます。しかし、それは「衝動性が強い」とも言い換えられるので、一度決めたら周りを顧みずにどんどん騙される方向に突き進んでしまう危険性も孕んでいると言えます。 こうした騙されやすい人の特徴を踏まえて注意したいのは、必ずしも「頭がいい=騙されにくい」という因果関係が成立しないということです。一般的に、頭が良くて社会的地位が高い人は、詐欺にかかりにくいと思われがちですが、それはまったくの誤解です。たしかに仕事ができる人は、先を見据えて事業計画を立てたり、行動力が高かったりと、ワーキングメモリーが活発に働いている傾向にあると言えるでしょう。 しかしだからと言って、騙されにくいとは言えないのです。ワーキングメモリーの働きが活発だったとしても、ワーキングメモリー自体のキャパシティーはほぼ増加しないうえ、容量が圧迫されやすいかどうかはその時々の精神状態や、騙す側の技量によって左右される側面が大きいからです。 むしろ、「頭がいい=騙されにくい」と過信してしまうことで、認知バイアスが働いて騙されやすくなってしまう危険性が考えられます。人には一度、他人の話を信用すると、それ以降あまり疑おうとしない性質があります。騙す側からすれば、うまく相手の懐に入り込んでしまえば後はお手のものというわけです。 社会的に成功している人や頭のいい人ほど自信家で、これまで自分がやってきたことを信じて疑わないでしょう。そう考えると、騙す側の力量次第では、ハイスペックな人ほどコロッと相手を信じきってしまうリスクも高いと考えられます。人に信用してもらうための鉄則は、とにかく相手を褒めることです。成功者の場合は褒めるところもたくさんあるので、つけ入る隙も多く生まれるはずです。 重要なのは、高学歴、高収入、高地位など、ハイスペックな要素を兼ね備えているからといって「私は騙されない」と過信するのは、かえって脳を騙されやすい状態にしてしまうということです。