【マーメイドS回顧】アリスヴェリテの勝因はリズム重視の逃げ キズナ産駒らしく持続力戦で強い
たとえハイペースでもリズム重視
初夏の京都に爽やかな風が吹いた。デビュー4年目の永島まなみ騎手とアリスヴェリテが逃げ切って重賞タイトルを手にした。普段から思い切りのいい競馬が目につき、勝負度胸を感じる騎手らしく、見事な逃げ切りだった。 【マーメイドステークス2024 推奨馬】騎手は京都芝2000mで驚異の複勝率90.5%! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 普段から永島騎手は横山典弘騎手に教えを乞うという。ダノンデサイルのダービーに代表されるように横山典弘騎手は馬のリズムを何よりも最優先。永島騎手もまたアリスヴェリテのリズムを大切に騎乗した。元々、アリスヴェリテはアルテミスS3着など素質は間違いなし。しかし、馬が近くにいるとムキになる気性が出世を阻んできた。近走で柴田裕一郎騎手が逃げる競馬を試み、前走2勝クラスでは前後半1000m56.8-61.0の超ハイペースを逃げ切って3勝目をあげた。今回は1000m通過58.3。アリスヴェリテにとっては前回よりゆったりと運べ、斤量も3キロ軽く、さぞ楽だったに違いない。 永島騎手も後ろが動きにくい残り1000mから、11.4-11.4とペースを上げ、残り400mまでセーフティリードを保ちつつ、最後の失速に備えた。後ろを待たず、強気に進める度胸が光った。これもすべて序盤からアリスヴェリテのリズムを大切に運び、馬に負担をかけなかったからこそ。最内枠に逃げ候補ベリーヴィーナスがいて、スタート直後の攻防はレースのポイントだったが、外からすんなりハナをとれた。ここでベリーヴィーナスに抵抗されては、ムキになっていた可能性がある。永島騎手のゲートから序盤の攻防を制する集中力も見逃せない。
難しい競馬をこなしたエーデルブルーメ
ベリーヴィーナスもあっさり引いたようにみえるが、こちらの前走は前半1000m通過59.6で、アリスヴェリテに先着した2走前は62.3と同じ逃げタイプであっても、狂気的な逃げには付き合えない。競りかけないのは賢明な選択だったとみる。最初からアリスヴェリテが主張すれば引く構えだった。これもベリーヴィーナスのリズムを重視した戦略だろう。結果は大敗なので、自己条件に戻ってもマイペースを決められるかが取捨のポイントになる。 前が強気に出ただけに、後続は仕掛けが難しくなった。離れた3番手以降は団子状態で進みペースは平均程度。そこまで苦しくなかった分、脱落する馬が少なく、動きたくても動けない状況に陥った馬もいたはずだ。ダービーもそうだが、動かなければと感じても、動ける状況になければどうにもならない。なぜ動かないのかという問いに対し、多くは馬群で身動きが取れなかったという答えが一つの正しい解釈だろう。 後方から外目を早めに進出したのは2着エーデルブルーメ。1番人気でもあり、責任はきっちり果たしたといえる。本音はペースが上がった残り1000mから先行勢にアリスヴェリテを追いかけてほしかっただろうが、やはりそこで動くのはリスクが大きい。エーデルブルーメも折り合いに気を遣う繊細さを内包しており、馬群に入れず、かつなだめ切るという難しい競馬を強いられるタイプ。そういった競馬はできた。力を出し切った2着であり今回は展開に泣いた。