東京パラ五輪女子マラソンで悲願の金メダルを獲得した道下美里が表現した「今この社会に必要なメッセージ」とは?
5年前とは異なる涙を流した道下は、リオ大会を思い出すように青山さんに問いかけた。 1人で勝ち取った金メダルではない。 最初は無理作りしていた笑顔を、周囲へ捧げる感謝の思いから自然と輝かせられるようになった道下が言う。 「私は本当に最高の仲間に恵まれて、この大会を迎えることができました。私には最高の伴走者と最強の仲間がいたので、ここにたどり着いたと思っているので」 すぐ近くに気配を感じる青山さんの背後に志田さん、そして地元福岡のチームのメンバーを思い浮かべていた道下は「みんなで祝福したい」と声を弾ませた。 レースにおけるガイドランナーは道路の状態やタイムを伝え、給水所でドリンクを渡す役割を担う。リオ大会後に世界記録を3度更新した道下のレベルアップに反比例するように、地元での練習で伴走できるのは10人ほどに減った。それでも思うように練習ができないコロナ禍で、交通量の少ない早朝や遠方の山間部でパートナーを務めてくれた。 支え続けてくれた周囲への感謝を忘れない道下へ、5年越しの夢をともにかなえた青山さんも「本当に力強い走りで、隣にいた私の方が勇気をもらいました」と笑った。志田さんも「練習の力を100%出し切れた結果だと思います」と続いた。 障害者と健常者が一体となって100%以上の力を発揮し、最もまばゆい輝きのメダルを手にした42.195kmは、「多様性と共生」をテーマに開催された東京大会の最終日を締めくくるのにふさわしい、パラリンピックの意義を日本中に伝える最高のメッセージになった。