高額な住宅ローンで返済不能者が続出中…資産価値よりローン残高が大きい場合に自己破産を避け家に住む方法
■自己破産を避けて家を残す方法 オーバーローン(資産価値よりもローン残高が大きい場合)でも、自己破産は避けて家を残したいときは、「個人再生」を選びます。 これは民事再生を個人向けに簡略化し、費用も抑えたものです。住宅ローン分は従来通り払い続けながら、他の債務を圧縮して3年ないし5年で支払う旨の再生計画を裁判所に提出します。 OKが出れば、債務を最大5分の1まで減額して居宅を守ることが可能です。 個人再生には、最も基本的な「小規模個人再生」と、会社員・公務員や年金受給者など変動幅の少ない定期収入のある人向けの「給与所得者等再生」の2つがあります。 前者は自営業者もOKで、住宅ローン以外の債務額が5000万円を超えていなければ利用が可能です。後者は前者と異なり、債権者の同意が要りません。 最低限支払うべき金額はそれぞれの手続きや債務の総額、可処分所得の金額によって異なります。 ただ、その再生計画がとん挫したら、残る手段は自己破産のみ。消費者金融などで借金を重ねたりすると、それすらできなくなります。自己破産は原則として債務の支払いを全額免除されますが、浪費やギャンブルがあった場合には原則として免責されません。また居宅を含む33万円以上の現金は原則処分(自由財産拡張の申し立てをすると99万円まで現金が保有できます)。就く職業にも制限が生じます(警備員、保険募集人などはNG)。 親族に相談して、居宅を買い取ってもらうのも一手段です。が、それだけの資産を持つ親族がいる人はそうはいませんし、経験上、買い取り額は2000万円から3000万円が限度と感じています。 昨今、どうしてこんな金額のローンを組めたのだろう? というくらい高額な住宅ローンを組んでいる人が少なくありません。住宅に限らず、ローンを組む際には、本当に返済をしていけるのか否か、慎重に検討をすることをお勧めします。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年11月29日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 萩生田 彩(はぎうだ・あや) NEXTi 法律会計事務所 代表弁護士 東京都生まれ。2011年明治大学法科大学院法務研究科法務専攻修了、12年弁護士登録。専門分野に中小企業法務、相続、不動産問題、刑事弁護など。著書に『遺産分割実務マニュアル』など。 ----------
NEXTi 法律会計事務所 代表弁護士 萩生田 彩 構成=西川修一 撮影=的野弘路