村上信五さんが農業ビジネスに本格挑戦 ぶどうプロジェクト「パープルM」 目指すは、農業×エンタメによる農業の課題
人気が低迷する巨峰をリブランディング
村上さんがノウタスの取り組みで大きく共感したのが、巨峰のリブランディングでした。 近年、巨峰はシャインマスカットの人気に押されて生産が大きく減少。シャインマスカットが1房1500円程度なのに対して、生産により手間がかかる巨峰はその半値の700~800円で流通しています。 そんな市場のトレンドの影響で、多くのぶどう農園が巨峰からシャインマスカットにシフトしているのです。
髙橋「巨峰はぶどうの王様ですし、味も最上級においしい。そんな巨峰が生産されなくなってしまうのは、ぶどう業界にとって大きな損失です。 中長期的に考えると、品種の多様性があるほうが絶対にいい。疫病などのリスク、トレンドや好みの変化、加工などを考慮すると、品種が多いほど選択肢が増えます。そのためにも、まずは巨峰の人気を取り戻そうと、リブランディングに取り組みました」 ノウタスが運営する産直EC「ノウタスモール」で巨峰とシャインマスカットの食べ比べセットを「あと値決め」で販売。「あと値決め」とは送料のみ定価で、商品の値段は購入後に食べてから消費者が決めて支払うというユニークな仕組みです。 その結果はというと、巨峰にはシャインマスカットより1.4倍も高い値段がつきました。
髙橋「シャインマスカットもおいしいけれど、巨峰のほうが味に深みやコクがあるという声が多かったです。この結果を世の中にリリースすることで、巨峰農家に『自信を持って巨峰を作り続けてください』というメッセージを送れたと思います」
ぶどう農家の抱える課題解決に向けて
ぶどう農家の抱える課題は、ほかにもあります。そのひとつが、流通に乗らない規格外品の扱いです。 ぶどうは1房に数粒傷んでいたり、房のシルエットが崩れていると規格外となり、値段が大きく下がるか、商品として流通できなくなります。そこでノウタスが仕掛けたのが、複数の品種の規格外品の粒を少しずつ集めた食べ比べパッケージの販売です。 髙橋「見た目も華やかで、いろいろな味を楽しめるのが楽しいと好評です。高級なぶどうは1房数千円もしますが、この食べ比べセットなら1粒だけお試し感覚で食べられます。こういった新しい販売方法をマーケットに提案することも、我々にできることのひとつです」
さらに加工品として、ぶどうのビールの販売やグルテンフリーのバウムクーヘンの開発も行っています。「パープルM」の認知度がアップすることで、ブランドライセンスによる商品化のオファーも舞い込むようになりました。 構成・取材・文:久遠秋生 撮影:安部まゆみ バナー写真提供:ノウタス デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)