日本人には不要?必要?「グルテンフリー」を真面目に考える(専門家が監修)
糖質制限について調べているとグルテンフリーの文字を見かける機会は多くないだろうか。たしかに小麦も糖質ではあるがその狙いは異なる。じゃあいいか、というと、そうでもない。正しく知って、正しく付き合おう。[監修/福島正嗣(みらい胃・大腸内視鏡クリニック院長)
教えてくれた人
福島正嗣さん(ふくしま・まさつぐ)/さまざまな病院勤務を経て、2017年に内視鏡検査専門の〈みらい胃・大腸内視鏡クリニック〉を設立。延べ10万人の胃腸を診た専門医。著作に『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)が。
そもそもグルテンフリーって何だ?
プロテニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチが書籍で明かした食事法で一躍有名になった「グルテンフリー」。 この食事法を導入したことでジョコビッチのパフォーマンスは爆上がり、たちまちトッププレーヤーへと上り詰めた。以来、意識高い系の人々が彼に続けとばかり実践しているという話。 とはいえ、イメージ先行で実際グルテンフリーって何?という人はまだまだ多い。パンやパスタなどの炭水化物を控える食事法ということから糖質制限と混同されがちだが、実は似て非なるもの。 「グルテンフリーはもともと欧米で見られるセリアック病という病気の患者のための食事療法です」と言うのは、〈みらい胃・大腸内視鏡クリニック〉院長の福島正嗣さん。 「グルテンは小麦、大麦、ライ麦などの麦類に含まれるグリアジンとグルテニンというタンパク質が水分に触れたときに作られる成分のこと。セリアック病はこのグルテンに異常反応することで小腸の細胞が壊されてしまう自己免疫疾患です。 アメリカでは約1%という頻度で発症するとされていますが、今のところ日本人に患者はほとんどいないというのが現状です」 パンを常食する欧米人に比べ、米という主食がある日本人はまだセーフ? いや、この続きを読めば、そう安心してもいられない。
不調の理由は腸のガードの破壊にあり
カラダの外と内の関所、小腸が穴だらけになって不調が生じる。 セリアック病に至らずとも、グルテンを摂取することで不調が表れる「グルテン不耐症」という人々がいる。 倦怠感、頭痛、便秘や下痢、集中力の低下、肌荒れなど、その症状はさまざま。ではなぜグルテンがこうした症状を引き起こすのか? 「グルテンの材料となるグリアジンには胃や膵臓から分泌される消化酵素では分解されにくい、プロリンというアミノ酸が多く含まれています。このためグリアジンは消化されないまま小腸に送られます。 すると今度はゾヌリンというホルモンが小腸粘膜から分泌され、小腸の細胞の結合を緩めます。小腸のガードが壊されることで、消化不良のタンパク質が体内に侵入し、炎症やアレルギー反応が引き起こされると考えられているのです」 小腸はカラダの外側と内側を隔てる関所のようなもの。口から摂取した食物は小腸の上皮細胞から血管を経由してはじめて体内へと吸収される。 ゾヌリンの役割は弱った腸の細胞を脱落させるときには必要だが、グルテン摂取によって過剰に働き、小腸という関所が「ザル」になることが問題。 「さらにゾヌリンは血管と脳の組織を隔てる血液脳関門の結合も緩めると考えられています。脳のガードが緩くなり毒素のようなものが脳に運ばれ、頭痛などの原因になるとされています」 未消化のグルテン、恐ろしや。