考察『光る君へ』20話 中宮(高畑充希)が髪を切り落とした重大な意味、ききょう(ファーストサマーウイカ)の衝撃はいかばかりか
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。20話「望みの先に」では、19話ラストで起きた不祥事への処分が、中宮・定子(高畑充希)の身に降りかかる悲劇が描かれます。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載20回です。
19話ラストの事件
前太政大臣・藤原為光屋敷前で、花山院(本郷奏多)に矢が射かけられた。院は出家の身で女のもとに通っていたことが世間に知られてはまずいので「やめろ! 朕は大事ない!」騒ぎにするなと叫ぶ。伊周(三浦翔平)と矢を射た隆家(竜星涼)はその場から逃走したが、両者の従者同士が闘乱となり、死者まで出てしまった。 『小右記』にはこのとき、実資のもとに道長から「隆家の従者が花山院の供をしていた童子ふたりを殺し、その首を取って持ち去った」という内容の手紙が届いたと記されている。 貴族が支配した平安時代は、その後の武士の世と地続きなのだと感じる逸話ではないか。
伊周は「心幼き人」
二条の屋敷に帰ったあとも完全に動揺して、子どものようにわめき散らす伊周。『栄花物語』における彼の人物評「心幼き人」がそのまま描かれているなあと感心した。 その当時の書物は、歴史上の人物の人柄を後世に伝える。しかし、人の手で書かれたものである以上、そこには必ず書き手の主観が加わる。その書き手はどんな立場か、どういった意図をもって書かれたものか。そして歴史は、勝者の手によって紡がれるものだということを忘れずにドラマを楽しみたい。
伊周と隆家は終わりだな
「い……院が? 射られたのか?」 その場に居合わせた斉信(金田哲)によって知らされた一報にあっけにとられて、すぐには事態が飲み込めない道長。そりゃそうだ。前代未聞の事件だもの。 「伊周と隆家は終わりだな」 ふふっと笑う斉信に、第19話での彼の台詞「そろそろ俺も参議になりたいな」を思い出す。内大臣・伊周と中納言・隆家が失脚すれば、蔵人頭である斉信は昇進する可能性が高いのだ。