母の日に13、14号で5打点…BIGBOSSが「何を投げたらいいの」と嘆く西武・山川穂高のホームラン量産の理由とは?
右足首の捻挫や左ハムストリングスの肉離れなど、故障禍に苦しんだ2020年と昨年はともに24発どまり。2億1000万円に達していた年俸が、2年続いた4000万円ダウンで1億3000万円になった現実を前にして、山川はこう宣言していた。 「来年はとんでもない数字を出して、何億円もアップさせる気持ちでやります」 復活を確信していたからこそ、あえて強気な言葉を残した。 3年連続の本塁打王とともに、打率3割以上を目指して2020年から打撃フォームの改造に着手した。しかし、理想として掲げた、無駄を省いたコンパクトなバッティングがしっくりこない。元に戻そうともがいた日々でやがて負のスパイラルに陥り、本塁打数が激減したばかりか打率も2年続けて2割台の前半に落ち込んだ。 しかし、シーズン最終盤の昨年10月に転機が訪れた。日本ハム戦でアーリンから、オリックス戦で平野佳寿からそれぞれ放った23号と24号で「ホームラン王を獲得したときよりも、自分のなかで手応えがあった」とひらめいた。 前さばきでボールをとらえる感覚を、そのまま秋季キャンプでも磨き続けた。いまでは右打席に背筋を伸ばした自然体で立ち、グリップを高く掲げた状態から、上下動を可能な限り抑えてスイングを開始する。契約更改後に山川はこんな言葉も残している。 「構えとか、左足を上げるとか上げないとか、形はどうでもよくなりました」 詳細は今シーズンが終わるまで明かさない、ともつけ加えた山川だが、タイミングの取り方で感覚的に合点がいったのだろう。試合を重ねるごとに思い切りのよさも加わった結果として、14本のうち9本までを3球目以内でスタンドインさせている。 2発とも初球をひと振りで仕留めたゴールデンウィーク最後の一戦では、気持ちの上で山川をさらに発奮させる状況も整っていた。 母の日だった。 1本目を打った直後の広報談話で「母の日に打てて良かったです。お母さんありがとう!」と、素直な気持ちを伝えた。お立ち台で「お母様へのメッセージを」と投げかけられた山川は、目を閉じながら少し首を傾げた。ファンの前で言おうかどうか迷っていたのだろう。最後はちょっぴり照れくさそうに笑いながらこう打ち明けた。 「まあ、来ているんですけど……」 どよめいた本拠地ベルーナドームに、実は母親の喜代子さんを招待していた。ホームランを放って三塁を回った後に、山川はともに右方向のスタンドへ視線を送りながら本塁へ向かっている。おそらくはそこに喜代子さんが座っていたはずだ。 山川が生まれてすぐに離婚した喜代子さんは女手ひとつで、中学生の段階で故郷の沖縄産の豚「アグー」が愛称になるほどの恵まれた体に一人息子を育て上げた。 いまでも感謝の思いを忘れない山川は、かつて「決して裕福ではなかったけど、僕がお母さんの分もご飯を食べて育ててもらった」と語ったこともある。 2019年の母の日にも2発を放ち、日本人選手で最速となる通算100号を達成した直後のヒーローインタビューでは、思いの丈を喜代子さんに捧げている。 「あそこまで打球を飛ばせる体にしてくれて、本当に感謝しています」 日本ハム戦後のヒーローインタビューでも、照れながらこう続けた。 「あまり何か言うと調子に乗るので……まあ、うそです。いつもありがとうございます。えー、恥ずかしいので、これでやめておきます」