再戦雪辱の裏にドラマが……日本ミドル級王者の竹迫が8回終了TKOでV3
ボクシングの日本ミドル級タイトルマッチが3日、後楽園で行われ王者の竹迫司登(28、ワールドスポーツ)が同級1位の加藤収二(28、中野サイトウ)を8回終了後の棄権によるTKOで下し3度目の防衛に成功した。両者は3月2日に対戦したがドロー。竹迫がデビュー以来続けていた連続KO勝利が「10」でストップしていたが、竹迫は前回の反省を糧に再戦で見事なリベンジを果たした。陣営は、世界への足がかりにするためOPBF東洋太平洋のベルトに照準を絞っている。
セコンドが棄権を申し立て
8ラウンドの終了間際。 “不死身”の挑戦者が一瞬、顔を横に向けた。 体を密着させ、押し込むように小さなパンチを浴びせてきた竹迫にスイッチが入る。ロープを背負わせての連打。右のダブルから左のオーバーフックがヒットすると、加藤はレフェリーが割って入ると同時にセカンドロープに背中を打ちつけるように崩れ落ちた。 TKO勝利だと早合点した竹迫は、ガッツポーズと勝利の雄叫びを挙げたが、試合は終わりではなかった。会場のファンを混乱させるようなレフェリングだった。ゴングで間に入ったのか、加藤のダメージを認めて試合を止めたのかがわからない。結局、ゴングを告げるストップだったようだが、そのインターバルで「まだやれます」と、試合続行を訴える加藤を斉藤会長が制止した。 「おまえには今後のことがある。ポイント差を考えても(逆転は)難しい。もう終わりにしよう」 レフェリーに棄権が申し立てられ加藤は椅子から立たなかった。 竹迫は、もう一度、万感のガッツポーズをやり直した。 「しんどかったです」 それがリング上の第一声。 「まさか倒せるとは思っていませんでした。もっとできるかなとも思ったんですが……まだまだです」 右手の一番大きな拳部分の分厚い皮がめくれあがっていた。 「いつものことです」 強打ゆえの宿命だが、激戦を表す痛い証だった。 敗者の控室では、肩にタオルをかけた加藤が「最後は連打が効いて倒されてしまった。ポイントも離されていたし、棄権は納得のいく判断でした」と、うつむき加減に言葉を絞り出した。