再戦雪辱の裏にドラマが……日本ミドル級王者の竹迫が8回終了TKOでV3
雪辱をかけた再戦だった。 3月2日の試合では、加藤の足と手数で揺さぶられ、KOマシンは戦略、戦術の前に屈した。結果は三者三様のドローだったが、プライドは傷つけられ、「正直、負けたと思うくらいに悔しかった。すぐにやりかった。やりすぎと言われるくらい練習した」。 前回は、ほとんどサウスポー相手のスパーリングを消化できず、しかも減量に失敗していた。だが、今回は、万全の準備をした。 サウスポーとの距離感をつかむため、「30キロ以上重くてスピードもあった」というヘビー級1位の上田龍(石神井スポーツ)やアマチュアの重量級サウスポーとスパーリングを繰り返した。 「冷静に。ショートに打って右を流さない。右フック、ワンツーを打つときのモーションの大きさ、開きを修正すること」に時間を割いた。そして、この日は、「判定になってもいい。倒そうと思う気持ちを持たないように」と、心の奥に語り続けた。 ゴングと同時に右のリードブローを積極的に打ち込んでいった加藤は、強引さが消えた竹迫のスタイルの変化に違和感を感じた。 「距離が違う」 竹迫は無理につめずボディだけが届く、前回より数センチ遠い距離からの左右のボディ攻撃を仕掛けた。何発かまともにはいった。そこから右ストレート、右フックというメガトン級のパンチへつなげていく。 「少し届かない距離にいるからパンチが当たらず足を使えなかったんです。対応しきれなかったことが敗因です」 加藤は、前回、竹迫をあざむいた前後左右のステップを踏めなくなった。しかも、インファイトでは、体を完全にくっつけられドロー試合で竹迫を苦しめたアッパーを打てる空間を消された。 王者がラウンドを支配していく。だが、打っても打っても加藤は表情を変えず動きも止めなかった。ガードや体の向きを少し変えることで致命的なブローを避け続けた。それでも竹迫に焦りはなかった。 「前回もそう。効くはずのパンチが効かずに焦った。でも今回は、効かなくとも焦らず動揺せず、次につなげようと想定してた」 5ラウンドには反撃も食らった。右のショートカウンターを効かされた。「ボディにもいいのをもらった。でも、そんなんじゃひるまないぞ!と」。前に出続けて危機脱出のためにクリンチも使った。 そのインターバル。 藤原俊志トレーナーが笑って話しかける。 「効いたか? あんな一発でも効くのがミドル級なんだよ。だからでかいパンチじゃなくてもいい。細かく小さなパンチをコツコツ当てていこう。色気を出すな」 もう一度、ボディから上下の打ち分けに切り替えた。加藤のカウンターをフェイントで誘い、そのうち終わりのシュートのパンチを狙った。10連続KOを実現したワールドクラスのパンチが、加藤の頑丈な肉体に少しずつ“ヒビ”を入れていく。 「6ラウンドだったか、7ラウンドだったか。椅子から立ち上がるときに嫌そうな顔をしたんです。心が折れているのがわかったんです」 8ラウンド終了間際のフィニッシュへの予兆はあったのである。