たった1つのデータから小惑星「2001 CC21」の形状を推定 はやぶさ2探査予定天体
■ユーモアにあふれた研究発表
ここからは余談となります。まず、今回開発された解析手法はどうして「ドウシテ」という名前なのでしょうか。DOUSHITEは「Diffracted Occultation’s United Simulator for Highly Informative Transient Explorations」の略であり、直訳すれば「回折掩蔽統合シミュレーターによる非常に有益な過渡現象の追及」となります。 ドウシテを命名した有松氏は以前、京都大学吉田キャンパス施設屋上に設置した、惑星の表面で発生する天体衝突に由来する閃光を観測する小型観測システムに「ポンコツ(PONCOTS)」と命名していますので、同じようにシャレを利かせたものだと言えます。なおPONCOTSは「Planetary ObservatioN Camera for Optical Transient Survey」の略であり、直訳すれば「光学的過渡現象測定用惑星観測カメラ」となります。 また、この記事の冒頭でも紹介した、フライバイするはやぶさ2と共に描かれた2001 CC21の想像図は、実は初代の「はやぶさ」がサンプルリターンを行った25143番小惑星「イトカワ」の3Dモデルを元に作られています。京都大学OASES/PONCOTSプロジェクトのX(旧Twitter)ではこの理由が述べられています。今回の研究で、ドウシテによって割り出された2001 CC21の楕円形は、余りにもイトカワそっくりです。そのため当初のリリース図は小惑星にモザイクをかけて読者の想像を掻き立てる方針であったとのことです。しかし、「これはこれで変な文脈が発生しそうだという指摘を受けキャンセル」し、この記事冒頭と同じリリース図が使用されました。 このようなユーモアにあふれた命名や対応は、普段科学に馴染みのない一般の人々に向けて、たとえ笑いからでも興味を持ってほしい、そして天文学で重要である市民科学の参加者を増やしたいという、研究者の願いの発露であるとも言えます。最後に、そのような願いが分かる有松氏のコメントを引用します。 「掩蔽観測楽しいよ!みんなやってみて!」 Source Ko Arimatsu, et al. “Diffraction modelling of a 2023 March 5 stellar occultation by subkilometer-sized asteroid (98943) 2001 CC21”. (Publications of the Astronomical Society of Japan) “はやぶさ2探査予定小惑星の形状推定に成功―アマチュアの恒星掩蔽観測がはやぶさ2拡張ミッションに貢献―”. (京都大学) はやぶさ2拡張ミッションチーム. “小惑星2001 CC21による掩蔽が観測されました!”. (JAXA) はやぶさ2拡張ミッションチーム. “小惑星2001 CC21による掩蔽観測:続報”. (JAXA) 京都大学OASES/PONCOTSプロジェクトのX (旧Twitter) アカウント
彩恵りり / sorae編集部