婚約を破談にさせ略奪婚のあと離婚…御曹司が「純粋だから」と信じる”怖い女”の策略
婚約者のいる彼を自宅に誘い込み…
前作の7話では、沙世の家を「牛の糞臭い」と口にした女生徒が、地元のスーパーで沙世の兄にばったり出会う。沙世のいじめのきっかけを作ったことを後ろめたく感じる彼女は、遠慮がちになるが、沙世の兄は屈託なくルミンの話を始める。 ルミンが自分の妹を自殺に追いやった相手であるなど、考えたこともない沙世の兄。その兄の話から、ルミンが彼の友達の富野 と結婚していた事実が判明する。 その富野という、いかにも“お人好しそうな”男性に、「中井ルミンさん、いえ、森葵さんのことでお聞きしたことがある」というメールが届く。 「どこで知ったんだろう、ボクが葵と結婚してたこと」 富野とルミンは結婚し、すでに離婚していたのだ。 富野がルミンと出会ったのは、ルミンのバイト先のカフェだった。親の決めた婚約者のいる富野は、ルミンを「綺麗な子だなあ」と思ったものの、それ以上のことは考えないようにしていた。だがルミンは連絡先を手渡し、「パソコンがうまくいかない」などと言って、自宅に誘い込む。そんなルミンに富野は押し切られ、関係を持ってしまった。 富野は罪悪感から、「婚約者がいる」と告げて、関係を断ち切ろうとするのだが、ルミンは「2人で誠心誠意謝って、許してもらおう」。 婚約者と富野の約束などまるで気にせず、自分都合で話を進めるルミンを、「ボクが婚約を破談にするものと信じていた」「なんて純粋な子なんだろう」とますますのぼせる富野。 結局富野は自分によく似た、悪意の欠片もなさそうな婚約者と別れ、ルミンと結婚した。
「彼女と夫婦でいられたことは誇り」
実は富野は「富野建設」の御曹司だった。結婚したルミンは、会社の経営に積極的に口出しする。だが社長は父親、まだまだカバン持ちの富野に、父親を説得することなどできるわけがない。やがてルミンは富野に構わず、東京の「文芸教室」に通い始める。 そして、「都内にアパートを借りたい」と言い出すルミンに、会社の経営に関わらせてやれなかったことへのうしろめたさ」や「彼女にがっかりされ続けること」に耐えられなくなった富野は、離婚を選択する。 富野はルミンと結婚したために、「とても気の合った」婚約者を失い、親からの信頼も傷つき、何より今、たった一人で田舎の町に残されることになった。にもかかわらず、慰謝料を払って離婚した今でも、「悪いのは全て上を目指さないボクだった」「短い間でしたけど、彼女と夫婦でいられたことは誇り」と言う。 どこまでも人の好い富野……。 ルミンが富野を落とすまでの手練手管と、思い通りに動かせなかった富野を捨てるまでの詳細は、漫画の試し読みでじっくりご覧いただきたい。 ◇ルミンの期待に応えてあげられない。富野はそれを自分のせいだと言い、慰謝料を払って、ふたりの結婚生活は終わらせた。 お金を手に入れ、東京で有名エッセイストとなったルミンと、ひとり地元に残された富野。ふたりの今の「差」を富野はどう感じているのか。今もなおルミンに未練を残しているように見えるのが物悲しい。 第9話では、ルミンに文章を教えた教室の先生が登場する。 剽窃の疑いもあるルミンだが、エッセイストとしての力は持っているのだろうか。 次回、エッセイストとしてのルミンの評価が明らかになる。 ---------- 人気エッセイスト 中川ルミン主宰のオンラインサロンには、彼女を慕う大勢のファンが集う。子どもの学校の悩み、受験、親戚との確執、親身に悩みに寄り添うルミンは「いい人」そのもの。だがルミンの素顔には謎がある。 高校時代のルミンの記憶は真実なのか。ルミンをめぐるさまざまな人の思惑と言い分が交錯するミステリーコミックエッセイ『怖いトモダチ』(岡部えつ 原作・やまもとりえ 漫画 / KADOKAWA)。 ----------
岡部 えつ/山本 えり/FRaU マンガ部