日本フライ級王座戦で衝撃的結末…ユーリ阿久井が最終回残り11秒で井上尚弥の後輩ホープを壮絶“失神”TKOで防衛成功
プロボクシングの日本フライ級タイトルマッチが21日、東京・後楽園で行われ王者のユーリ阿久井政悟(25、倉敷守安)が同級6位の桑原拓(26、大橋)を10回2分49秒、右ストレートで倒しTKO勝利で2度目の防衛に成功した。ユーリは1回に右ストレートでダウンを奪うと、途中、桑原のスピードと手数でポイントを奪われたが、試合終了11秒前に勝負を決めた。桑原が失神し担架で運ばれるほど壮絶な一撃だった。ユーリは、岡山のジム所属選手として初めて世界王者となる可能性を秘めたハードパンチャーなのかもしれない。
「まさかこういうことがあるのか」
コーナーから声が聞こえた。 「娘さんが見とるぞ!」 1987年にボクシング不毛の地、岡山倉敷にジムを構えて34年。今なお情熱を失わない、信念の元日本王者、守安竜会長(68)が叫んだ。ユーリは、昨年6月に高校時代から交際をしていた夢さん(26)と結婚。9月には長女の千聖ちゃんを授かっている。新型コロナ禍で会場には来られなかったが、遠く岡山で中継を見て応援してくれている家族の存在は、戦う理由のひとつ。 最終ラウンドを前に「アウェー。もしかしたらがある」と、判定で負けていることを想定して勝負に出ていたが、その声を聞き「倒しにいった」という。 強引に左ジャブから前に出る。1分になろうとするとき、右のストレートを命中させ桑原を大きくぐらつかせた。さらに逃げる桑原を追い回したユーリは、ロープを背負わせると、そこに鮮烈のワンツー。右ストレートをまともに浴びた桑原は大の字になって失神した。あまりに壮絶でドラマチックな結末に後楽園ホールは、異様な雰囲気に包まれ、ユーリはリングを駆けまわって喜びを表現した。2階バルコニーに設置してある電光タイマーは最終ラウンドの残り時間を11秒と示していた。 「まさかこういうことがあるのか…不思議な気持ちでここにいる」 2度目の防衛に成功したユーリは自らが演じた「残り11秒のドラマ」を信じられないでいた。 「こんな勝ち方をするとは思っていなかった。中盤くらいでつかまえられると思ったが甘くなかった」 桑原は気を失ったまま担架で控室に運ばれた。検査を受けるため病院へ直行したが、大橋秀行会長は「意識もしっかりして喋っているから大丈夫だと思う」とコメントした。