宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日
「アインシュタインの夢」がついに実現?
しかし、1967年に、アインシュタインの夢を実現する一つの理論が生まれてきました。それが、アメリカのスティーヴン・ワインバーグとパキスタンのアブドゥス・サラムによる、ワインバーグ=サラム理論です。この理論によって、電磁気力と弱い力が統一されました。そのため、この理論は電弱統一理論、あるいは単純に統一理論とも呼ばれます。 さらに、その後、完全に完成した理論ではありませんが、重力を除く三つの力を統一した、大統一理論も現れました。これらの理論によって、現在、四つに分かれて存在している力は、元は一つの力であり、「宇宙誕生直後に枝分かれした」と考えられるようになってきたのです。 たとえば、電磁気力と弱い力は、絶対温度で1000兆Kという高温(=高エネルギー)状態を設定すれば、同様のふるまいをします。この電磁気力と弱い力に強い力を加えた三つの力は、さらに高エネルギーの10の28乗Kという状態を作り出せば、同じふるまいをするのです。 とすれば、私たちの世界にある四つの力は、宇宙誕生直後の高温(=高エネルギー)状態では、実は一つのものだったのではないか、それが宇宙の温度低下とともに枝分かれをしていったのではないか、ということが、四つの力を理論的に統一する研究を通して考えられるようになりました。 宇宙が誕生すると、10のマイナス44乗秒後という、時計では計れないような非常に短い時間の頃に、まず重力が、他の三つの力と分かれました。10のマイナス36乗秒後には、湯川先生が発見された強い力が枝分かれしました。そして10のマイナス11乗秒後には、電磁気力と弱い力が分かれたのです。 このように、宇宙誕生直後に次々と力が分かれて、現在のような四つの力がそろったという描像が、力の統一理論から考えられるようになりました。 言ってみれば、類人猿が進化して人間が生まれてくる過程で、チンパンジーやオランウータンに枝分かれをしたように、重力、強い力、そして電磁気力と弱い力が分かれてきたということです。言い換えれば、人間が過去に逆戻りするとチンパンジーやオランウータンと一緒になるように、四つの力も最初は一つのものだったのではないか。そう予言したのがこの理論でした。 こうした進化がなぜ起こるのかを考えるとき、生命の場合では突然変異と自然選択という進化の理論によって説明がなされます。では、力の進化(=力の枝分かれ)は、なぜ起こるのでしょうか。 力の統一理論では、これは「真空の相転移」によって起こるとしています。相転移とは、水が氷になるように、物質の性質(相)が変わることです。あらかじめ簡単に言っておきますと、宇宙の初期に温度が急激に下がったことで「真空の相転移」が起こり、真空の空間自体の性質が変わりました。すると、真空での力の伝わり方も変わったのです。そのような相転移が次々に起こり、そのたびに、重力が枝分かれし、強い力が枝分かれし、電磁気力と弱い力が枝分かれをしていったというのです。