静岡で“バカ旨魚料理”を提供する、「チーム・サスエ」の7人の料理人とは?
亡くなる間際、長谷川さんが、「必ず次のいい料理人が生まれる。その人間に全力を注ぐ約束をできるか?」と前田さんに問うたのが最後の約束。そうして前田さんが出会ったのが、「てんぷら成生」の志村剛生さんです。中村さんは志村さんの一番弟子として、「てんぷら成生」で8年学んだ人。いよいよ独立が決まった時、「月の森」の女将さんから跡地を譲り受け、「なかむら」を開業します。
志村さんが天ぷらを揚げる姿を隣で長年見てきた中村さんですが、もちろん個性は異なるもの。ただ、思わず手で食べたくなる天ぷらという点は共通しています。揚げる直前に土を拭いて衣に潜らせる人参も、元気な豆鯵も、食材の活力をダイレクトに感じるため、箸も介したくなくなる。磯辺揚げなど、中村さんこその逸品も生まれています。 開業当初、「考えながら数をこなすしかない」と話していた中村さん。天ぷらという本番勝負の料理ですから、日を追うごとに進化していることは間違いありません。
■ 浜松市「Notice」今津 亮さん(39歳)・2017年開業/取引歴1年
埼玉県出身の今津さんは、東京農業大学卒業後に浜松の農業開発系企業に勤めていた野菜のスペシャリスト。いまも自ら野菜を作り、「Notice」の横には畑が広がっています。2023年初旬から「サスエ前田魚店」と取引がありますが、当初は前田さんの息子さんが仕立てる魚を料理していました。それが、2023年秋から今津さんの仕事とキャラクターに関心をもった前田さんが、自ら仕立てるようになります。 最大の個性は、それぞれ突き詰められた魚と野菜の共演。前田さんの冷やしや脱水には非常に細かな見極めがありますが、今津さんの野菜への手のかけ方も相当マニアックです。料理に合わせて収穫ができて、生産者こそ知る調理を施します。
尻丸海老の出汁が染み渡った大根、エボダイの皮目の微かな青っぽさと融合する春菊&白菜など、馴染みある野菜の新たな表情を知ります。そういえば、今津さんは前田さんに“キャベツ太郎”というあだ名で呼ばれているのですが(チーム・サスエは各メンバーにあだ名あり)、「Notice」はキャベツのパスタも絶品。キャベツに合わせたパスタを手打ちし、パンもチーズも自家製です。