東京五輪ボクシング存続問題先送りに選手の心ケアに配慮
国際オリンピック委員会(IOC)の理事会が30日、東京都品川区内で開かれ、2020年の東京五輪の競技としてボクシングを存続させるか、どうかについて協議、結論を来年6月のIOC総会まで先送りにした。 IOCは、米財務局から麻薬犯罪に関わる人物としてマークされているガフール・ラヒモフ氏(ウズベキスタン)が新会長となった国際ボクシング協会(AIBA)のガバナンス、財務管理などを問題視。IOC理事である世界レスリング連合のネナド・ラロビッチ会長(セルビア)を委員長にした調査委員会をIOC内に立ち上げ、AIBAの組織運営の内部調査を行っていくことを決めた。その調査委員会の報告を元に来年6月のIOC総会で最終結論が出されることになった。 その調査が終了するまでの間、五輪予選や各種プレ・イベント、チケット販売、五輪マーク、ロゴの使用などが凍結される厳しい処置も決定。 AIBAの東京五輪組織委員会への接触も禁止。また現在、凍結されているIOCからの分配金は、不正を防止するため、AIBAや日本ボクシング連盟を通さずにJOC(日本オリンピック委員会)を通じて選手に直接分配されることも決まった。 IOCは、五輪競技として100年以上の歴史があるボクシング競技の存続と、選手の立場を守ることを原則にしているが、予断を許さない状況が続くことになった。 国内のアマチュアボクシングを統括する日本ボクシング連盟の内田貞信会長は、IOCが下した決定の先送りと各種の活動が凍結された処分について、THEPAGEの取材に答え「競技の存続を信じて、諦めずに頑張っていくしかない。AIBAの自浄能力に期待したい」と悲壮な決意を明らかにした。 「一番心配なのは、結論が先送りされることによって起きる選手の心、気持ちのへこみ。連盟としては、モチベーションが維持されていくように選手の気持ちのケアを考えたい。まずは、選手が不安にならないように、選手の所属している各種団体の責任者に気持ちのケアを第一に動いてもらうように働きかけたい」と続けた。 内田会長は、29日に東京五輪でボクシング競技が実施された場合の開催場所である両国国技館のある墨田区が主催して行われた決起大会に参加。その際、リオ五輪代表の成松大介(28、自衛隊体育学校)、2016年のユース世界選手権で優勝している堤駿斗(19、東洋大)らの東京五輪代表候補の心情をヒアリングして、心のケアの重要性を痛感したという。 また五輪予選の実施も凍結されたが、来年6月の最終決定を待ってから五輪の国内選考会を実施しても間に合わない。本来ならば、来年3月から国内の五輪代表選考会をスタートする予定が組まれていた。 内田会長は、「五輪の国内選考会は行えない。その大会名は使えないが、来年9月には世界選手権が行われる予定のため、それに向けての出場選手を決める国内大会として、3月から試合をスタートさせたい」という考えを示した。 最終的な五輪の国内代表選考会は、来年12月の全日本選手権。この時点では、IOCの最終結論が出ているため代表決定の手順として支障はないが、内田会長は「メダル獲得の可能性のある選手も何人かいる。彼らの心と体の準備に影響が出ないように配慮したい」と繰り返した。 またプロボクシングの元世界ミニマム級の4団体王者で、今回、アマ登録が認められた高山勝成(35、名古屋産業大)については、その3月に行われる国内のアジア大会予選から参加してもらう考えがあることも明かした。 東京五輪が開幕する1年1か月前まで競技が実施されるか、どうかもわからない異例事態をどう乗り切っていくのか。 「存続をアピールする活動も引き続き行っていきたい」と内田会長。“ドン”山根明・前会長の退陣を受けて新体制でスタートした日本ボクシング連盟が、その重要な責任の一端を担うことになる。