2024年住まいのトレンドワードは「断熱新時代」! 省エネ、健康面からニーズ高まり、学校断熱改修・DIY・等級6以上の高性能住宅の普及など断熱は次のステージへ
スーパー高断熱や部分断熱、技術の進歩も追い風に
近年は、住宅の工法や建材の進化によって、より高い断熱性能の向上が期待できるようになったことも追い風になっている。例えば、HEMS3.0(使用料の見える化や遠隔操作に加え、自動制御によってエネルギー消費の最適化が可能)を活用することで極めて高い“スーパー断熱仕様”を実現することができたり、居住時間の長い部屋だけを断熱改修する“部分断熱改修”を実現できたりする。 60代のご夫婦は将来は1階だけで生活することを考え1階の一部のみ部分断熱リノベを実施。床、壁、天井を解体し、窓は樹脂サッシに交換。床断熱・壁断熱・天井断熱に加え、床下・外周部・隣室との間には気流止めを施工。リフォーム後のLDKは、冬でも無暖房で17~18℃ほど。夏は冷房の効きが格段に上がり、電源をOFFにしてもしばらく涼しい状態が続くのだとか。
また、近年は省エネ基準の義務化やZEH住宅の推進などを受けて、地元の工務店の断熱施工技術が向上していることも、断熱性能向上が広がる要因にもなっている。
夢・建築工房のコンパクトな部分断熱リノベ。60代の夫婦が将来は1階だけで生活することを考え、1階の一部のみに部分断熱リノベを実施した施工例。
「学校よ、お前もか」。学校や公共施設の断熱改修も進む
断熱性能への関心は住宅にとどまらない。というのも、年間の熱中症のうち4.7%(総務省「令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」より)は、教育現場で発生しているからだ。また、夏季の教室の体感温度が高い学校ほど、体調不良の訴えや集中力欠如の発生率が上がるが、断熱改修など環境改善を行うことで、これらの数値は改善することがわかっているという。 特に学校では、事業者が行う断熱改修だけでなく、「断熱DIYワークショップ」など、子どもたちが参加してワークショップ形式の断熱改修DIYイベントも行われているという。
長野県・上田染谷丘高校では生徒が主体となり、断熱ワークショップを実現。
遅れている日本の断熱、省エネ制度にも変化が…
EU諸国では、EPC(Energy Performance Certificates)という共通基準を設け、20年近く前から住宅の断熱・省エネを厳しく運用している。イギリスでは2020年から低品質な住宅の賃貸が禁止されたほどだ。遅ればせながら日本でも、住宅性能表示制度における断熱等性能で2022年4月から「等級5」=ZEH水準、10月から「等級6・7」が新設された。
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