JRの券売機はなぜ使いにくいのか? デジタル化が裏目に出たワケ! 利用者視点で考える鉄道の未来とは
指定席販売の不便さ
インターネットで「自動化しているが使いにくいもの」というランキングサイトがあった。統計学的に整理されたデータかどうかはわからないが「音声ガイダンス(コールセンターなど)」「セルフレジ」「スマートフォン注文(飲食店など)」などが挙げられるなかで、鉄道の指定席券売機が2位にランクインしていた。 【画像】「すげぇぇぇ!」これがJR東日本の「平均年収」です! 画像で見る(13枚) 「確実に人間(有人窓口)がやった方が早いだろあれw」 「システムが一見さんお断りすぎる」 というコメントが付いていた。おりしも今は年末年始、新幹線や特急など指定席の利用が急増する時期である。 筆者(上岡直見、交通専門家)は国鉄時代に全線乗りつくしも達成して、いわゆる「乗り鉄」だが、それでも最近のJR各社が提供するデジタル手段は使いにくくて閉口する。先日たまたまJR東日本の北陸新幹線を利用したが、駅では自動音声で、窓口以外の手段をできるだけ利用してほしいと繰り返していた。 「窓口に並ばずゆっくりのんびりと年末年始のご旅行を」 「できるだけ多くのお客様にスムースにご利用いただくために」 「自動券売機ではさまざまなきっぷをお買い求めいただけます」 というのだが、そういっておきながらいずれの案内も最後に 「くわしくはホームページで」 で終わってしまうのはいささか投げやりの印象を受ける。それがわかりにくいから窓口に行くのである。まして盆休や年末年始しか新幹線や特急を使わない人にとってハードルが高いのは当然だ。
ネット予約の複雑さ、若者にも不満
前述のランキングサイトは、その性格や言葉づかいから回答者は若い人が多いと思われる。「有人窓口はデジタル化に順応できない高齢者のため」などという 「例外処理」 的な観点からの評価も聞かれる。指定席券売機は若い人にとっても使いにくい。実際のところ駅の有人窓口に並んでいるのは高齢者ばかりではなく若い人も多い。そもそも、待っている間にほとんどの人がスマートフォンをいじっているくらいだから、デジタル化に順応の問題ではないだろう。 指定席券売機で「さまざまなきっぷが購入できる」というが、実はそうでもない。上記の画像はJR東日本の某駅の指定席券売機である。東海道新幹線で東京から新大阪まで行き、そこから在来線のJR西日本の特急に乗り継ごうとして「新幹線 → 在来線特急のりつぎ」を選択したが、目的の指定券がどうしても出てこない。何回か試したあげく、券売機にはJR東日本の特急しか設定されていないことがわかった。 これは利用実態と乖離している。首都圏はJR東日本の営業エリアのなかで地理的に最も南寄りにある。国交省の「全国幹線旅客純流動調査」というデータをみると、首都圏の1都3県からJR東日本の営業エリア内の東北・上信越に向かう人が年間約3000万人に対して、JR東日本の営業エリア外の西方向に向かう人はそれよりずっと多く約4900万人である。 「会社が別だから」 という理由で利用実態に合わない制約を設けるのでは本末転倒ではないか。 JR東日本の「えきねっと」あるいはそれに相当する各社のインターネット予約システムでは全国の指定券が予約できるので、それを使えばよいという意見もあるだろう。しかし筆者の職場の若い人でもインターネット予約は使いにくくて困るといっている。 例えば「えきねっと」を開くと乗車駅 → 降車駅 → 月日 → 時間帯 → 人数(おとな・こども)、と入力して列車の検索に進み、きっぷ・座席の種類 → きっぷの種類 → 座席の種類(グリーン車など) → 割引の有無や種類 → 指定券のみか乗車券つきか、のように項目が多い。 その各項目ごとにも枝分かれがある場合もあり、その意味がわからないと行き詰まる。ひとつでも未入力項目があると「次へ」のボタンはグレイアウトして動けない。場合によっては「はじめからやり直す」になる。 ようやく次へ進むと「ユーザーID」「パスワード」を求められる。これをクリアして「座席の選択」を決定すると、 お支払方法の選択 → クレジットカードのセキュリティコード入力 でようやく完了する。ネット予約だからといって入力が必要な項目数は窓口と変わらないし、むしろオンライン決済のための項目が増える。