宮田愛萌さん「あやふやで、不確かな」インタビュー 恋愛小説2作目「人の気持ちは分からない。だから書く」
私は演出家。頭の中で稽古する
――それぞれの登場人物にモデルはいるのですか? 特にモデルはいないですね。ただ、エピソード中に出てくる感情は、私が人と話しているときに受け取った感情だったり、聞いた話を元にして膨らませていじったりして作っています。 ――では物語を書くときに、登場人物たちの気持ちを想像する。 そうですね。書くときに思うのは、私が演出家だということ。例えば成輝の設定を役者さんに渡して、成輝を作ってきてもらうんです。私が書いている時間が稽古で、稽古のときに役者さんに動いてもらって、どうしてその動きをしたのか、どういう気持ちなのかを逐一聞いていく。 それで「そんな動きになる?」とか「それは違くないですか?」と対話や喧嘩をしながら、物語を紡いでいくんです。まあ、全部私の頭の中での出来事なのですが。 ――なるほど。そういった対話や喧嘩から生まれた描写なのですね。執筆期間はどれぐらいかかりましたか? およそ4カ月です。そのうち2カ月は成輝の話を書いていました(笑)。 ――いつも執筆するときは、構想に時間をかけるのですか? それとも“稽古”に時間をかけるのですか? 私は書くときにそれぞれの登場人物のプロフィール帳を書くんです。どこで生まれて、どういう家族関係で、クラスメイトはどんな人で、といったような。そのプロフィール帳は、今回は1日で全部作りました。それで、プロットを編集者さんに渡す際に、話の構成というよりは、どういうシーンを書きたいかという短編をいくつか書いてお送りしました。
「喪主になりたいの」にキュンキュン
――書いていて楽しかった章は? 一番書いてて楽しくて、すぐに書き終わったのは、智世の章です。 せっかく恋愛小説を書くのなら、少女漫画っぽいものを書きたいと思っていたんですね。でもどうせ王道は書けないから、せめて一編は胸キュン要素が詰まったものを書こうと思って。それが智世の章なんです。「みんなこの章を読んだら、キュンキュンが止まらないぞ」と思いながら書きました(笑) ――宮田さんとして一番キュンキュンする描写は? 「喪主に、なりたいの」というプロポーズです。このセリフは、自分の中で最強のプロポーズだと思うし、みんながキュンキュンするだろうと思って書いたんですけど、友達に感想を聞くと、みんな「え?」と時が止まっていた感じで(笑)。どうですか?刺さらないですか? ――「人の気持ちが分からない」というところから書き始めた恋愛小説ですが、書き終えてみて今、どんなことを思いますか? 書き終わった瞬間、もう一生恋愛は書かないと言っていたんですけど、でも、完成したものを読んで、しばらくしてまた別の恋愛も書こうかなという気持ちになっています。 誰の気持ちも分からないし、人を好きになる気持ちはもっと分からない。「なんでこの2人は付き合っているんだろう?」と思いながらずっとこの作品を書いてきて、分からなすぎて、もう書けないと思っていたんです。でも、分からないなりに書くのも楽しいかなと思って。 ――分からないものを分かろうとする好奇心のようなものでしょうか。 そうかもしれないですね。「なんかよく分からないけど、こういうシーンっていいよね」という思いだけで突っ走ってみても、それはそれで読み物としては面白いのかなと思うんです。