宮田愛萌さん「あやふやで、不確かな」インタビュー 恋愛小説2作目「人の気持ちは分からない。だから書く」
「この本が1番好き」と言ってくれたら
――宮田さんの好きな作家さんは? 江國香織さんと千早茜さんが大好きです。 江國さんの『流しのしたの骨』は小学校4年生の頃からずっと一番好きな本。今でも読み返すと、涙が出てきてしまうぐらい好きな本ですね。私もそういう本が書けたらいいなと思っています。 千早さんの本は夜が似合うと思うんです。寝る前に「今日はどれにしようかな」と選んで、結局全部読み通して、夜が明けてしまう。生々しい景色が浮かんでくる文章が素敵ですよね。私もたった一文で何かの景色が見えたらいいなと思って、小説を書いています。 ――ちなみに本が好きになったきっかけは覚えていますか? 幼い頃から母親が読み聞かせをしてくれてたらしいんですけど、私は覚えていなくて。あまりに私が読み聞かせをねだるので、母は読み聞かせをする代わりにひらがなを教えてくれて、家にある絵本や本にすべて振り仮名を振ってくれたんですね。 「あとは自分で読んで」というスタイルになってからは、一人で黙々と本を読んでいました。物心つく前から本を読んでいたので、逆に本を読んでいない自分が想像できないです。 ――今は文筆家として活動していますが、普段はどのように本を読むのですか? 本を読みながらいろんなことを考えたり、本の世界に入って登場人物のことを考えたりしていると、素の自分に戻れる感覚になるんですよね。その感覚が好き。でも、自分の作品を書いているときは、あんまり世界観の強いものは読めなくて。何かと影響されやすいので、例えば1回読んだことある本などを読んだりしています。 私の部屋の本棚には、今1900冊プラスアルファの本があります。2000冊を超えているというと家族に怒られるので“プラスアルファ”としていますが、実際は2200冊ぐらいかな(笑)。内訳としては、江國さんの本、千早さんの本、島本理生さんの本など、作家ごとのコーナーがあり、文庫本は出版社別に並べられています。漫画の単行本もありますね。 ――今後の文筆家としての目標は? 誰かが「この本が一番好き」と言ってくれたらいいなと思っています。例えば、私の書いた小説を読んで「こういう生活いいな」と思うのでもいいし、登場人物に影響されて何かを始める人がいてもいい。そういう思いを持ってくれている人が1人でもいてくれたらいいな。 特に『あやふやで、不確かな』という小説は、「人間関係って難しいよね」と思っている人に読んでもらいたいです。読んでもらってもすぐ何か解決するわけではないんですけど、「そういうこともあるよね」という相談相手ぐらいにはなると思うので、気軽な気持ちで読んでいただけたらいいなと思っています。 <宮田愛萌(みやた・まなも)さんプロフィール> 1998年生まれ、東京都出身。アイドルグループを卒業後、文筆家として、小説、エッセイ、短歌などジャンルを問わず活動。2023年に『きらきらし』(新潮社)で小説デビュー。 (文:五月女菜穂)
朝日新聞社(好書好日)