公共交通のポテンシャルが地図でわかるオーストリア、ローカル線「赤字か否か」の議論から脱却できぬ日本が欠く発想
■ 駅・停留所のサービス水準を2つの情報で分析 オーストリアやスイスの方式は、この2つの弱点をスタート点にして、全国一律で地理情報として図示して可視化できるようにしたことが特徴である。以下では、オーストリア方式を参照しながら詳しく見ていく。 PTSQCの考え方はこうである。 まず、「点」、すなわち駅や停留所をクラス分けする。その際に2つの情報を参照する。 1つは、「駅や停留所にどのような公共交通サービスが来ているか」である。仮に運行間隔が同じだとしたら、バスしか停まらないバス停よりは、路面電車の停留所のほうがよいだろう。 それよりは各駅停車の停まる鉄道駅の方がよいし、快速列車や特急列車が停まる鉄道駅はなおよい。これが最初のスタート点になる。 第2は運行間隔である。間隔が短ければ短いほど、サービス水準が高いというのは直感的にわかるだろう。逆に間隔が長くなればなるほど、サービス水準は落ちる。1日に3~4本しか来ないのでは、サービスレベルはかなり低い。 この2つの基準から導かれるのがPTSQCの「駅・停留所クラス」である。オーストリア方式の例を示したのが表だ【次ページ参照】。
■ 公共交通の「種類」と「運行間隔」で駅・停留所をランク分け 横方向が、駅や停留所にどのようなサービスが来ているかを分類したもので、その駅・停留所に発着するサービスで最もランクの高いものから決める。 縦方向が運行間隔である。これは、まず午前6時から午後8時までに発車する全方面の全サービスの本数を総計し、それを2で割ることで上りと下りの平均本数を算出する。 午前6時から午後8時までは14時間、すなわち840分なので、この上下平均を840で割れば、平均運行間隔が求められる。 平均運行間隔のクラス分けは7段階であるが、短いところほど「10-20分間隔」のようにきめ細やかに区分され、長くなると「60-120分間隔」のように大雑把になる。 やや専門的に言えば指数関数的に区分が設定されているのだが、これによって「程度」を表すようになっている。 また、オーストリア方式では平均運行間隔が210分(3時間30分)を超える場合は、一日4本に満たない場合に該当するが、この場合は「ランク外」である。ちなみにスイス方式だと平均運行間隔60分以上、要するに1時間以上あく場合は「ランク外」である。 サービスの種類が4種類、平均運行間隔の分類が7段階あるから、組み合わせは28通りもできることになる。しかしこれではわかりにくいし、議論や政策づくりにも使いづらい。 そこで、おおむね同じサービス水準の駅・停留所といってよいところを、同じランクとしてまとめる。オーストリア方式では、例えば、バスが10分間隔で来る停留所と、快速列車が30分間隔で停まる停留所は、どちらも同じランクとしている。 合計で8ランクあり、ローマ数字でIからVIIIまでを割り振っている。 何と何が同じクラスかを決めるのは簡単ではないし、そのための計算式があるわけでもない。この分類は専門家も含むステークホルダーによる長い議論で決めたものであり、「えいや」と適当に決めたわけではない。 この参画と議論を通じて決める方法で、結果的には、直感とよく合うクラス分けを導き出している。