「世界で最も恐ろしい通り…」“90度の断崖絶壁”に隣接して奈落まで数センチのボリビアの街が危険すぎると話題に
ボリビアの高地に構える都市・エルアルトは、標高が高く酸素が薄い環境を生かし、スポーツ選手のトレーニングの地としてしられる。 【動画】恐ろしすぎる!絶壁に飲み込まれつつあるボリビアの街 だが、街はもう一つ、危険な側面でも世界に知られることとなった。高所に広がる都市の外郭が断崖絶壁に隣接しており、家々が今にも奈落の底に飲み込まれそうになっているのだ。 問題の区域の一体は、通り沿いにカラフルな波板屋根の低層住宅が立ち並んでおり、都市内部の通りから見えれば何の変哲もない街角だ。だが、ひとたび裏手に回ると、きれいに一列に並んだ家々のすぐ背後に、落差61メートルの断崖絶壁が迫っている。
90度の絶壁に佇む住宅群
AP通信が伝える動画では、この様子を詳しく確認できる。都市の名物でもあり移動手段でもあるロープウェイのゴンドラが空中を行き交うなか、その真下に切り立った崖が広がる。崖の縁と接するようにして、住宅がびっしりと並んでいる。 状況は年々悪化しているという。ロイターによると、豪雨と地球温暖化が拍車をかけ、住居群の基礎をなす土台が浸食されている。 エルアルト市役所の水道・衛生・環境管理・リスク担当のガブリエル・パリ氏は、移住するよう住人たちに求めてきた。ロイターに対し、60度の崖でもすでに危険域だと説明している。 「ですが、この谷は90度の絶壁です。だからこそ我々は住民に立ち退きを求めており、立ち退かない場合は強制的な手段を取らざるを得ません」と述べる。
退去しない住民たちの理由とは
しかし住人たちにとって、この場所は特別な意味を持つ。主にアイマラ族のシャーマン(ヤティリ)たちが、パチャママ(大地の母)への供物を捧げる場所として使用している。 アイマラ族のシャーマン、マヌエル・ママニ氏は、「ここは私たちの日々の仕事場だから移動するつもりはないのです」と述べる一方、独自の対策を講じていると明かした。「土の手入れを行い、雨水は別の場所に流すようにしています」とロイターに語っている。 だが、家のすぐ裏手にまで絶壁が迫るこの住環境は、エルアルトの街の人々も危険視しているようだ。英BBCは、「地元の人々は、崖っぷちに建つこの小屋を、その危険性の高さから 『自殺の家』と呼んでいる」と報じている。 AP通信は、地質調査の結果を伝えている。それによると、この場所の家々は強固な岩盤に支えられているわけではなく、砂と粘土質の土壌の上に建てられているという。
奈落まで数センチ
英ミラー紙は、「世界で最も恐ろしい通り」として取り上げ、「玄関のドアから61メートルの死の奈落まで、わずか数センチ」と危険性を強調する。 ヤティリの一人、ガブリエル・ロペス・チバ氏は、「供物の儀式を行えば、パチャママ(大地母神)への捧げ物となり、この土地は決して動かない。むしろ安定する」との信念を語る。 危険な状況を改善したい市側と、古くからの神聖な場所を離れられないシャーマンたち。断崖の上に並ぶめずらしい街の光景に、知られざるせめぎ合いが潜む。
文:青葉やまと