神奈川県・厚木市の保育士がストライキを実行 「子どもたちを守るため」ハラスメントや“補助金の不正受給工作”に抗議
保育士に対するハラスメントは子どもにも悪影響
2000年、待機児童の解消などのために保育園の「設置主体制限」が撤廃され、それまでは原則として市区町村や社会福祉法人に限られていたところ、株式会社やNPO法人による保育園の設置が可能となった。その結果、保育士の低賃金化や人手不足が進む要因にもなったとする声もある。 組合員の保育士によると、国の定める配置基準の人数は「ギリギリ」のものであり、一人でも休職や退職をすると保育所の現場は混乱し、適切かつ安全な保育ができなくなるという。したがって、ハラスメントによって同僚が退職させられると、園に残った保育士の負担も多大なものとなる。 さらに、保育士の退職は預けられている子どもたちにも影響を生じさせる。1歳や2歳の子どもは、自分を担当する保育士が変更されると、強く不安を感じるためだ。関口園に子どもを預けているがストライキに賛同し、会見にも参加した保護者のXさんは、「子どもに対する精神的虐待」と表現する。 「保育園では、各食材について、子どもに飲食させていいかどうか、親に許可が取られる。しかし、以前には、許可していない牛乳を飲まされる事態があった。もしアレルギーがあった場合には、命にも関わる事故が起こっていた。ハラスメントによって保育士が次々と退職し、現場が混乱していることが原因」(Xさん) ストライキに賛同する保護者らが作成したプラカードには「子どもたちを守るためのストライキ」と書かれている。保護者のYさんは、ストライキに賛同した理由を「園で起きている問題は子どもたちにも影響がある」と語った。 「法人はまだ保護者に対して謝罪を行っていない。また、保育士らが応答を求めても、弁護士を立てて『また後日』と言い続ける。弁護士を通じてではなく、理事長本人が直接、謝罪してほしい」(Yさん) 組合員の保育士は「ストライキによって、反抗がしたいわけではない。安心して働ける職場にするため、私たちの声を聴いてほしい」と語った。 ユニオンの池田氏は、保育に限らず介護の現場でも同様の問題が全国で発生していることを指摘。 「営利企業の参入により、保育・介護にかけるお金が削られている。国の制度が、問題の遠因」(池田氏) 20日には、厚木市長および市の保育課に宛てた要請書が、総合サポートユニオンと介護保育ユニオンの連名のもの、および保護者らによるものの2通、提出された。法人に対する厳しい指導、市が把握している事実関係や今後の対応に関する説明、ハラスメントや離職を防ぐ対策、保護者らに対する窓口対応などを求める内容となっている。
弁護士JP編集部