「ホンダが日産を買収」説があり得なくはない理由、ゴーン氏は「ホンダの“偽装買収”に発展」と指摘
● 日産が2度目の下方修正 上半期は利益90%減 「2度目の下方修正は痛恨の極み。経営責任を取って今月(11月)から報酬の50%を返上する」。日産自動車の2025年3月期中間決算(24年4~9月)発表の場で、内田誠代表執行役社長兼CEO(最高経営責任者)はそう切り出した。 日産の中間決算は、営業利益329億円で前年同期比90%減、純利益192億円で同94%減の大幅減益となった。中間配当は見送り、25年3月通期業績見通しの純利益は未定とした。金融事業のセグメント利益を考慮すると、自動車事業は実質的に赤字に転落しており、「やっちゃえ、日産」ならぬ「またもやっちゃったか、日産」といった様相だ。 主力の米中で市場環境の変化に追い付けず、危機的状況に陥ったことが要因だ。内田社長も「日産固有の問題だ」と反省の弁を口にするなど、異例の決算となった。さらに、業績不振を受けて日産は世界生産能力を2割減らし、9000人の人員削減を行う大リストラ策も発表した。 「またもやっちゃったか」というのは、日産の業績が同様に窮地に陥った前歴があるからだ。カルロス・ゴーン元会長による長期政権で生じたゆがみと無理な世界拡大戦略のツケに加え、ポスト・ゴーンの経営陣の混乱もあり、20年3月期の日産の純利益は▲6712億円と、リーマンショック以来11年ぶりの大赤字となった。続く21年3月期も、4487億円の赤字に沈んだ。
こうした混乱を受けて、経営を立て直すべく19年12月に就任したのが当の内田社長だ。 商社の日商岩井から日産に転じた内田氏は、ルノーとの共同購買の担当などを歴任。社長に就任した当時は、中国・武漢駐在の中国事業責任者の立場だったが、社長候補としては無名であり、ダークホースとして日産立て直し役の白羽の矢が立った。 内田社長の下、日産は直ちに生産能力の20%削減や米国販売の収益力向上といった事業構造改革に着手した。以前、筆者が直接内田社長にインタビューをした際には、「毀損(きそん)した日産ブランドの立て直しと収益をマイナスからプラスにすることに注力してきた。これからは台数を上げ、適正レベルの株価を具現化する」と述べ、覚悟を持って事業構造改革を進めてきたことを強調していた。 事実、日産は24年3月期までの中期経営計画「Nissan NEXT」を進める中で、24年3月期にはグローバル販売が344万台、営業利益は5687億円(営業利益率4.5%)、当期純利益4266億円を達成。営業利益率5%以上の中計目標に対し、4.5%にとどまりこそしたものの、3期連続の増収増益を実現し、再生へ向けて順調なステップを踏んでいるかにみえた。 続く27年3月期までの新中計「The Arc」を発表した際にも、内田社長は「事業構造改革が進んだ。新中計でグローバル販売100万台増加と営業利益率6%以上を狙い、日産らしさへの成長を描く」と胸を張った。 だが、今期に入ると一転して日産に暗雲が垂れ込めるようになった。