「ホンダが日産を買収」説があり得なくはない理由、ゴーン氏は「ホンダの“偽装買収”に発展」と指摘
だが、内田体制を支えていたグプタ氏も、突然、23年6月の株主総会で退任が示され、6月末に日産を退社する事態となった(現在、グプタ氏はインドの財閥アダニグループの幹部を務める)。 グプタCOO退任の理由は正確には判明していない。社内ハラスメント疑惑とされたが、一方でルノーとの資本関係見直し交渉も関係しているようだ。グプタCOOと共に、経済産業省出身の豊田正和社外取締役も突然不可解に退任したことも、憶測を呼ぶ要因となっている。 しかし、内部的な問題を多く抱えてきた一方で、新たな成長路線を描く方向を進めたのも確かだ。 例えば、長年の懸案であったルノーとの資本関係見直しは、日産の収益回復によって状況が反転し、23年11月にルノー・日産が15%ずつ出資する「対等関係」になることで合意、新たなアライアンス関係がスタートした。 ゴーン時代末期には、ルノーによる“日産統合”が画策されたこともあったが、そうした日産の劣勢から対等関係にこぎ着けたことは一つの成果だろう。日産は23年12月に「創立90周年」を迎えたが、新アライアンスは100年に向けて新たな決意を示す土台となった。 さらに、今年に入り3月にはホンダと電撃的な戦略的提携を発表し、業界に激震が走った。次世代SDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)向けプラットフォームやEVバッテリーなどの基幹部品の共通化や車両の相互補完を進めていくといい、トヨタ自動車連合に対抗し得る大きな軸として注目を集めた。
3月には、新中計「The Arc」を新EC(エグゼクティブコミッティー)10人と共に内田社長が胸を張ってプレゼンしていた。 年初はそうした華やかな動きも見せていたこともあり、よもやここまで壊滅的な業績ダウンになるとは思いも寄らなかったのが正直なところだ。 ● ホンダによる「日産統合」が あり得なくはない 今回の中間決算で注目しなければならないのが、業績数値とともに発表された三菱自株の10%分の売却である。 三菱自は、同社の業績悪化により、16年に日産が34%出資して傘下に収めていた。だが、10%分の売却により、三菱商事(20%を出資し日産に次ぐ2位の株主)の出資比率と同程度になる。これまでルノー、日産、三菱自の親・子・孫というアライアンス関係にあったが、ルノーと日産は対等出資に変わり、三菱自への日産の出資比率も24%程度に下がることで、アライアンス関係は変化の兆しが生じている。 三菱株の売却意図について、内田社長は「三菱自の経営戦略をサポートするため」と説明したが、実態は日産業績悪化によるキャッシュフロー対策といったところだろう。今後は、三菱自の大株主であり、三菱自と日産と次世代モビリティサービスの共同出資会社設立で合意している三菱商事の出方に注目だ。 さらに、業績の足踏みにより、ホンダとの戦略的提携がどうなるかだ。日産とホンダの提携発表が行われた後、米国の自動車専門メディアのオートモーティブニュースがレバノンのカルロス・ゴーンに取材し、ゴーンによる「これはホンダの“偽装買収”に発展する」との発言を引き出している。