【スクープ】「富士山登山鉄道」、山梨県がLRTに代わる新案構想 ゴムタイヤで道路走る「電車のようなバス」とは
山梨県は富士山のふもとと5合目を結ぶ自動車道路・富士スバルライン上に軌道を整備する「富士山登山鉄道構想」を提案している。現在はLRT(軽量軌道交通)の車両を走らせるべく議論を進めているが、LRTに代わる新たな交通モードを検討していることが東洋経済の取材で明らかになった。 【写真を見る】中国・四川省宜賓市の「ART」は路上のマーカーを読み取ってゴムタイヤで道路上を走る仕組みだ ■「結局LRTありきでは」の批判 長崎幸太郎知事は日頃から「LRTありきではない、住民の意見も聞きながら決めたい」と明言している。しかし、県の動きが知事の発言と一致せず、なかなか住民に理解されなかった。
たとえば、県は昨年11月から富士北麓の6市町村で住民説明会を開き、住民の意見を吸い上げていたが、それと並行して大学教授やJR職員などの有識者で構成される「富士山登山鉄道構想事業化検討会」を立ち上げた。LRT導入による事業面、技術面の課題やその解決策を洗い出すのが目的で、検討会には受託事業者として事業面でデロイト、技術面で日本工営が参加した。検討会は2023年10月から2024年3月まで3回にわたって開催された。
10月28日、県は、「令和5年度富士山登山鉄道技術課題調査検討結果」と「富士山登山鉄道構想事業化検討に係る中間報告」を公表した。検討会の終了から公表まで半年も遅れた理由は、「4月に組織再編に伴う人事異動があったこと、夏山の登山規制の準備に追われたこと、検討会で委員が出した意見をもとに安全性にかかわる追加調査を実施したため」という。 技術課題調査検討結果をよく読むと、軌道や車両に関連する技術的事項について、委員が懸念する点をいくつも指摘しており、県の回答も「今後、検討する」といった歯切れの悪いものだった。また、富士山という急カーブ、急勾配を過酷な気象条件下で走行可能な車両の開発について車両メーカーが尻込みしている様子も読み取れた。
にもかかわらず、中間報告には、「上下分離方式による事業者側との適切なリスク管理が有効と考えられる」「事業化検討にあたり今後進めていくべき検討内容を次のとおり整理」といった文言が並び、県がLRT案で進めていくようにも読み取れた。反対派の住民たちからは、「結局、LRTありきではないか」「LRTの開発は技術的に不透明な要素が多いのにそれでも県は推進するのか」という批判の声が上がった。 ■EVバスは「来訪者のコントロール困難」