社長の息子、入社してすぐに大ヒット商品を開発 それが面白くなかったのは「カリスマ」で「靴下の神様」の社長だった…
「靴下屋」「Tabio」「Tabio MEN」などの靴下専門店を運営・展開するタビオ株式会社(大阪市浪速区)。履き心地を追及した最高品質を掲げ、「靴下の専門店」という新しい業態で成功を収めている。「靴下の神様」といわれたカリスマ創業者が立ち上げた会社は、一時は「3足1000円」のショップを出店するなど業績が低迷したこともあった。しかし、父から経営を引き継いだ越智勝寛氏(55)が、確執を経ながらも社名変更やマーケットインの発想を導入するなどし、経営を立て直した。越智氏に、事業承継の経緯を聞いた。 【動画】専門家に聞く「事業承継はチャンスだ。」
◆家業を継ぐつもりが、なぜか化粧品会社へ
――タビオに入社する前、化粧品会社で3年間勤務されていたそうですね。 大学卒業を控え、父に連絡したら「人が足りないからすぐ来い」と言われたので、タビオ(当時の社名はダン)に就職するつもりでいました。 ところが、タビオに行ってみたら、父からいきなり、経営者同士で仲の良かった化粧品会社「ハウス オブ ローゼ」に行け、と言われました。 まさかの展開でした。 でも、良い経験になったのです。 ――具体的にどんな経験をしたのですか? ひとつは、現場の人たちと一緒に働くことで、現場仕事の苦労や楽しさを味わったことです。 「ハウス オブ ローゼ」ではまず、物流倉庫で8か月間働きました。 棚卸の大変なときなどに、アルバイトの人たちも含めて食事会を開いたりして、職場に一体感をつくることができました。 あとの2年ほどは、女性の上司やスタッフに囲まれた職場で店舗販売員を経験しました。 しかし、経営サイドの指令は、現場の状況をあまり反映しておらず、組織の上層部が現場の実態を把握することの難しさを学びました。 父と仲がいいこともあり、上層部に会うこともあったので、ここぞとばかりに現場の状況を直接訴えましたが、うるさいヤツだと思われていたでしょうね。 この経験は経営する側になってから役に立っています。