なぜ横浜DeNAは最下位に終わったドキュメンタリー映画を劇場公開するのか…営業戦略と伝えたかった希望の光
もちろん選手にとってカメラを止めて欲しい瞬間もある。今回の作品内でも救援に失敗して思い悩む三嶋、山崎を追いかけるシーンなど、何か所かで緊張が走る局面があった。だが、前原氏は、「撮影することが辛いシーンであっても強い気持ちを持ってカメラを回している」と振り返る。 ときには「この姿があなたたちのプラスになるんだよ」と呼びかけ「さっきは、ごめんね」ともフォローし、コミュニケーションをとることで互いの立場を理解して信頼関係を深めていったという。 制作チームには「チームに貢献したい。選手の力になりたい」との思いもあり、本編に出てくる「モチベーションビデオ」の作製などにも協力した。 ファンにとっては、見所満載の秘蔵映像ばかりだが、製作サイドとしてのオススメシーンは、三浦監督の苦悩、オースティンの知られざる素顔、キャプテン佐野の成長を追った箇所だ。 ドキュメント映像シリーズの3代目監督となる辻本氏にとっては、2018、2019年の「FOR REAL」に続く3作品目。選手とのコミュニケーションも取れる間柄になっているが、クールな印象が強いオースティンに対しては「びびって怖がっていた」という。 だが、そのオースティンが、映画監督さえも驚かせる“ある行動”に出た。そこをカメラは見事にキャッチ。「辻本さんも、オースティンのナイスガイぶりに感動していた。どうしてもファンに届けたいシーンとなっている。佐野がキャプテンとして苦しみながらもチームのために前を向き、成長する姿もご覧になってもらいたい」と前原氏。 いずれも必見シーンだ。 そして製作サイドとしては、低迷脱出に必死にもがく奮闘の姿以上に伝えたいものがあった。 「三浦監督も語っていますが、最下位に終わったが希望もたくさんあった。そこを伝え、ファンの方々に“来年も応援しよう”と、期待できるようなポジティブな気持ちになってもらいたい。これまでは活躍した主力にフォーカスを当てがちでしたが、今回は来季以降期待のできる若い力にフォーカスした」 前原氏の説明にも力がこもった。 今回の作品の中では、新人ながらリーグ3位の打率.314、22本塁打、71打点の成績を残して、セ・リーグの新人王を広島の栗林と争い、惜しくも選に漏れたもののリーグの特別表彰を受けた牧の活躍に代表される1998年生まれの選手たちにスポットライトが当てられている。高卒2年目の森も登場。 また手術、辛いリハビリを乗り越え、今季復活した今永、田中健二朗、東の3人にもフォーカス。来季へのさらなる飛躍への期待を感じさせる内容となっている。物語のエンディングは、三浦監督が来季について語るシーンだ。 「DeNAらしく新しい挑戦、仕掛けは、これからも毎年、毎年続けていきたい」と原氏。 「BBB(BAY BLUE BLUES)2021」は週明けの22日から神奈川(6劇場)、東京など全国でロードショーが始まり、公開初日には、横浜ブルク13で三浦監督、佐野、今永が舞台挨拶に立ち、来年1月末には同作品のDVD・Blu-rayが発売予定となっている。 (文責・論スポ、スポーツタイムズ通信社)