10月の衆院選は「無効」…“4人の弁護士”が国を提訴した理由とは? 「“一票の格差”より深くて広い問題がある」
10月の衆議院議員選挙は議員定数が人口に比例して配分されておらず「違憲・無効」であるとして、三竿径彦(みさお みちひこ)弁護士らのグループが、東京都内の4小選挙区と比例代表選挙の東京ブロックについて選挙無効の判決を求め、東京高裁に訴訟を提起した。 【画像】衆議院の議員定数の変遷(弁護士JP編集部まとめ) 提訴後に原告の4人の弁護士が記者会見を行い、議員定数配分に用いられている「アダムズ方式」の問題点を指摘し、厳密な人口比例に基づく定数配分を行う必要性を訴えた。
「一票の格差」では済まない問題
議員定数不均衡については、往々にして、「一票の格差」の問題として報じられてきた。しかし、三竿弁護士は「国民1人あたりの投票の価値が『1:何』という話だけで済ますことができない、もっと深くて広い問題」と指摘する。 三竿弁護士:「われわれが求めているのは、『一票の格差の是正』ではなく『議員定数の是正』だ。 民主主義が成立するためには、国会議員が国会で議論して多数決で投じる1票は、同じ重さ・価値でなければならない。 国会議員1人1人が全員、同じ人口の選挙区から選出され、同じ数の国民を背負っていなければ、国会の多数決が国民の多数決と一致するとはいえない。 小選挙区について言えば、われわれの主張はすごくシンプルだ。日本の人口は約1億1200万人であり、衆議院の小選挙区の議員総数(289人)で割れば約43万人になる。つまり、議員1人1人が同じ43万人の選挙区から選ばれるべきだ」 なお、人口比例を厳格に貫こうとすれば、議員定数、選挙区の区割りが選挙のたびに変動する可能性がある。この点について、三竿弁護士は「最重要なのはあくまでも人口比例配分だ。まずそれを実現したうえで、選挙活動のやりにくさ等が生じた場合に初めて、いろいろな工夫をして是正していくべき」とする。 たしかに、憲法43条は国会議員を「全国民の代表」と明確に定めている。その理念に忠実に議員定数を配分することは、選挙区の区割りの便宜や選挙活動の便宜よりも優先されて当然といえるかもしれない。 わが国では国会議員と選挙区内の選挙民との結びつきが重視され、その選挙区から選出された議員は「地域代表」と扱われる傾向がある。しかし、それは本来の「全国民の代表」という概念と齟齬する面があるといわざるを得ない。 われわれ一般国民は、小選挙区から選出された衆議院議員と選挙民との本来あるべき関係について、正しく理解することに努めなければならないだろう。