10月の衆院選は「無効」…“4人の弁護士”が国を提訴した理由とは? 「“一票の格差”より深くて広い問題がある」
今回から導入「アダムズ方式」とその問題…「一人別枠方式の復活・温存だ」
10月の衆院選における小選挙区の議員定数は、2020年(令和2年)国勢調査の結果を基に「アダムズ方式」で配分されたものである。 かつては「一人別枠方式」がとられていた。これは、あらかじめ各都道府県に「1議席」ずつ割り振り、残りの議席を都道府県の人口数に比例配分する方式であり、不均衡の元凶とされていた。最高裁は2011年(平成23年)3月23日判決のなかで一人別枠方式を見直す必要性を説示し、この判決を受けて国会は2012年に法改正により一人別枠方式を廃止した。 これに対し、今回から適用された「アダムズ方式」とは、都道府県の人口数をある数「x」で割り、その商の小数点以下を切り上げた数を各都道府県に定数として配分したらその合計が総定数とほぼ同じ数になるような「x」を見つけ、それにより各都道府県への配分定数を確定する計算方法をさす(※)。 ※出典:高橋和之「立憲主義と日本国憲法 第5版」(有斐閣)P.364 「1」未満の小数点以下の「端数」が出たら、それがどのような小さな値でもすべて切り上げる方式である。極端な例では「0.01」などもすべて「1」に切り上げられる。それゆえ、人口の少ない都道府県ほど、有利な配分が行われやすい。 今回の衆院選の小選挙区の議員定数は2020年(令和2年)国勢調査の結果を基にアダムズ方式で配分されたが、東京都は「29.1078」で30議席(端数切り上げ)であるのに対し、鳥取県は「1.1783」で2議席(同上)が配分されている(【図表】参照)。
「きちんと向き合って議論してもらいたい」
國部徹(くにべ とおる)弁護士は、以上のアダムズ方式の概要について解説を行った。そのうえで、「恣意的な配分が許されない確立された数理的根拠のある方式であり、一定の意義がある」と評価しつつも、アダムズ方式には上述の「1未満の端数切り上げ」の処理に大きな問題があると指摘する。 國部弁護士:「アダムズ方式を用いると、結果としてすべての都道府県に『1未満の端数切り上げ』によって、定数が『1』ずつ配分されることになる。 小規模な都道府県に篤(あつ)く厚く、大規模な都道府県に対し冷たく薄くなっている。 この点は実質的に『一人別枠方式』の復活・温存と同じであり、人口比例配分とは程遠い結果となっていることに違いはない。 東京都は5つの選挙区が追加され30にまで増えた。しかし、人口比例に則って議員1人あたり43万人と計算して配分したら、本来は31か32にしなければならなかったはずだ。 アダムズ方式にはこのような構造的欠陥があるといわざるを得ない。 制度の導入の過程では、9つの方式が検討され、他に、より人口比例に近い結果を導き出せる優れた方式があったにもかかわらず、なぜアダムズ方式が採用されたのか。そのまともな理由が示されているとは考えられない。訴訟では、選挙管理委員会に、この点についてきちんと向き合って議論してもらいたい」