なぜJFL鈴鹿所属”キングカズ”「まさかの」10.9新国立凱旋試合が実現するのか…クリアソン新宿が主催の舞台裏
背景には新宿が歩んできた、他のクラブとは一線を画す歴史がある。 原点は2005年の春。就職活動で内定を得た後にボールを蹴りたくなった、大学4年生の受け皿になるクラブチームが必要だと一念発起し、当時立教大学経済学部4年生だった丸山和大氏が音頭を取って設立したのがCriacao(クリアソン)だった。 聞き慣れないポルトガル語の「Criacao」は日本語で「創造」を意味し、いまも掲げられるクラブの理念が色濃く反映されるキーワードでもある。それは「サッカーを通じて、世の中に感動を創造し続ける存在でありたい」となる。 2009年にJ1から数えて10部にあたる東京都社会人サッカーリーグ4部に参入。2013年には大手総合商社を退社した丸山代表が起業した、人材育成を主たる事業とするベンチャー企業、株式会社Criacaoがクラブの運営会社となった。 本社が新宿一丁目にある新宿区をホームタウンとし、ともに歩む思いをより鮮明にするために、2018年にはチーム名称に「Shinjuku」を加えた。迎えた2020年11月。地元と密着した一連の活動が認められ、新宿区との包括連携協定が結ばれた。 協定の項目は「スポーツ振興」「学校と地域との連携」「多文化共生」「健康寿命延伸・健康づくり」「観光・産業振興や地域商店街の活性化」と多岐に渡る。新宿区との緊密な関係や経営を含めたクラブの方向性はJリーグからも高く評価され、昨年2月にはJ3昇格への前提条件となる「Jリーグ百年構想クラブ」にも認定されている。 序盤戦を終えたJFLで新宿は1分け6敗と16チームで唯一、未勝利が続き、順位も最下位に沈んでいる。しかし、ピッチ内での戦いと同時に、クラブが前へ進んでいく姿を介して周囲を巻き込んでいくピッチ外の戦いも背負い続けている。 人口約34万人の新宿区はその1割強を外国籍が占める。本社周辺には新宿2丁目や歌舞伎町、新大久保、高田馬場など趣を異にする町が存在する。多様性を認め合いながら、追い求め続けてきた「創造」を発信する手段のなかでも最高位にランクされていたのが、新宿区霞ヶ丘町にある国立競技場でのリーグ戦開催だった。